小笠原満男と内田篤人。ふたりの“共鳴”に見えた鹿島の神髄

2020年05月10日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「ただの1試合だから」(小笠原)

小笠原(右)と内田(左)。鹿島の伝統を継承するふたりの考えは一致していた。写真:徳原隆元

「こういう大事な試合だからって、120パーセントは出ないよ。今回、練習は1週間弱しかなかったけど、準備してきたものを出すしかない」

 試合前のロッカールームで、内田篤人はそう言って仲間たちを送り出した。

 昨季の26節、ホームでのFC東京戦。勝点4差で首位に立つライバルを相手に、鹿島は2-0の完封勝利を飾ってみせる。開始2分にレオ・シルバのCKからブエノがヘディングシュートを叩き込み、78分にセルジーニョの鮮やかなミドルで止めを刺す。

 また内田は次のようなメッセージも送っていたという。

「いつも通りやろう、いつも通りに勝とう。大事な時こそ平常心。ワールドカップでも、チャンピオンズリーグでもそうだから」
 
 試合後、内田が明かしてくれた内幕に、思わず膝を打ちたくなる。鹿島というクラブに根付く伝統について、だ。

 キックオフ直前、記者席に行くためのエレベーター前で小笠原満男に遭遇。「今日は大事なゲームですね」と投げかければ、「ただの1試合だから」と諭された。

 首位チームとの大一番だからといって、特別に意識はしない。34試合の中の1試合。そう捉えて、「普通に試合をして、普通に勝って帰ろうっていう感じ」(内田)というスタンスでピッチに立つ。

 もっとも、昨季はそうした"鹿島らしさ"を見せる一方で、ここぞという勝負どころで勝てず、結局は無冠に終わっている。ザーゴ新監督を迎えて再興を期す今季、産みの苦しみを味わうかもしれないが、うまくいかない局面でも、焦れずに、迷わず、どれだけ"いつも通り"を貫き、勝利を掴めるか。真価が問われるシーズンになる。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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