【鹿島|回顧録】象徴的だった19年11月の川崎戦。お株を奪われる完敗が分岐点に

2020年05月07日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

ポゼッションとパス成功率で川崎を上回ったが…

昨季の31節、ホーム川崎戦で敗れて首位から陥落。その後も不甲斐ない戦いが続き、リーグ優勝を逃した。写真:徳原隆元

 今年1月1日の天皇杯決勝で神戸に0-2で敗れた後、土居聖真は言葉に詰まりながら、こう言った。

「個人的には、"常勝鹿島"って言われるのも終わりだと思っています」

 昨季は一時、4冠の可能性があったが、最終的には、ひとつのタイトルも取れなかった。連覇を目指したACLはベスト8で敗退。ルヴァンカップは4強入りも川崎に決勝進出を阻まれ、J1リーグは3位でフィニッシュ。最後の望みをかけた天皇杯も、先述したとおり、準優勝に終わっている。

 これまで憎らしいほどの勝負強さを見せつけて、断トツの20冠を成し遂げてきた鹿島だったが、どこで歯車が狂ったのか。象徴的だったのが、昨季11月のJ1リーグ31節、ホーム川崎戦だった。

 首位で迎えた大一番、試合のペースを握っていたのは、どちらかと言えば鹿島だった。リーグ屈指のパスワークを誇る川崎に対し、その数値は僅差だったが、ポゼッションとパス成功率で上回る内容だった。シュート本数も17対7。相手を押し込む時間は長かった。
 
 だが、結果は0-2の完封負け。川崎の粘り強い守備の前に攻めあぐねていると、62分、セットプレーから失点、さらに71分にはカウンターから致命的な2失点目を喫する。

 内容が悪くても、堅実なディフェンスで敵の攻撃をしのぎ、のらりくらりとゲームを進めながら、一瞬の隙を突いてゴールを陥れる。そんな試合巧者ぶりが、鹿島のひとつの強みだったはず。それを、そっくりそのまま川崎にやられてしまった。お株を奪われるような完封負け。この1敗でリーグ優勝の芽がなくなったわけではないが、あまりにも"らしくない"負け方に少なからずショックを受けた。

 しかも、相手は17、18年とリーグ連覇中で、19年はルヴァンカップ初優勝を成し遂げている川崎だ。3季連続でタイトルを手中に収めるなど、文字通り"常勝"の道を歩み始めたライバルに、ここぞという勝負どころで屈した事実が、大げさかもしれないが、ひとつの時代の終わりと、メインキャストを入れ替えた新たな時代の始まりを暗示しているかのようにも映った。

 あの時、鹿島と川崎を隔てていたものはなんだったのか。鹿島の内田篤人も、川崎の谷口彰悟も、「紙一重の差」と言った。

 では、その差を埋めたものとは? 谷口は「言葉で説明するのはなかなか難しい」と言ったうえで、次のように見解を述べた。
 

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