「なぜ柴崎岳の特長を活かさないのか」スペイン人記者が指摘したデポルティボの戦術的欠陥【現地発】

2020年04月09日 アドリアン・ブランコ

ビルドアップが機能せず、ロングボールを多発

昨夏にデポルに加入した柴崎。ここまでリーグ戦18試合に出場している。(C) Getty Images

 デポルティボの今シーズンの浮き沈みの激しい戦いを見ていると、砂丘に浮いている船を連想させる。

 クリスマスブレイク中のフェルナンド・バスケス監督の就任がカンフル剤となって、年明けに怒涛の巻き返しを見せたが、新型コロナウィルスの感染拡大による中断直前に再失速(直近4試合は2分け2敗。31節終了時点で降格圏の19位)。これは、チームが抱えている問題が単なる勢いだけでは解決できない、もっと深いところに根差していることを示している。

 そのチームの低調なパフォーマンスの影響をもろに受けているのが、他でもない柴崎岳だ。デポルは今シーズン、すでにファン・アントニオ・アンケラ、ルイス・セサル・サンペドロ、そして現在のバスケスと3人の監督がチームを率いているが、そのいずれの指揮官の下でも、柴崎は戦術面で輝きを放つだけの環境を与えられていない。
 
 この日本代表MFは、確固とした個性を持っている。しかし、テネリフェ(2部)への移籍を機に2017年1月にスペインに渡って以来、ラ・リーガでその才能の片鱗を披露したのは一時的に過ぎない。ロシア・ワールドカップで見せた貫録のプレー、あるいは鹿島アントラーズ時代にクラブワールドカップで披露した印象的なパフォーマンスと比較すると、物足りなさは否めない。

 長短の正確なパスを駆使し、ビルドアップに積極的に絡みながら、自在にポジションを移動して決定機を演出する――。この攻撃を司る能力が、柴崎の真骨頂だ。だが、ダブルボランチの一角で出場している現在、背後をカバーするパートナーのウチェ・アグボと縦の関係を図きながら、ボールのラインよりも前の位置でプレーする機会が多く、得意とするゲームメイク能力を発揮するには難しい状況にある。

 そのチーム戦術と柴崎の特長がマッチしていないことが顕著に表われているのが、ビルドアップだ。バスケス監督は4つのパターンを用意しているが、戦術上のキーマンである柴崎をメカニズムにうまく組み込むことができていないため、結局は苦し紛れのロングパスを多発しているのが現状だ。
 

次ページ冷静な柴崎までもが攻め急ぐチームに巻き込まれ…

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