【J Inside Story】湘南・高山 薫――1年での古巣復帰に懸ける決意

2015年01月20日 小田智史(サッカーダイジェスト)

獲得オファーは青天の霹靂。2週間ほど悩み、湘南帰還を選ぶ。

昨年もチームメイトとは連絡を取り合い、オフの日には食事に繰り出していたこともあって、チームへの溶け込みは問題なし。1月13日から始動した全体練習では、さっそく軽快な動きを見せている。 (C)SOCCER DIGEST

 湘南に頼もしい男が帰ってきた。持ち前のスピードと激しい上下動で「湘南エクスプレス」の異名を取った、高山薫である。
 
 高山の下に古巣の湘南から獲得オファーが届いたのは、新天地・柏での1年目のシーズンを終えた2014年12月。第一印象が「とにかくビックリした」(高山)のも無理はない。柏の新監督に就任した吉田達磨と起用ポジションや目指すサッカーのスタイルについて会話を交わし、「新しい気持ちでやるんだ」と、その目はすでに新シーズンへと向けられていたからだ。
 
 高山は契約を1年残していたため、柏側も当初は放出の意思はなかったという。それでも、クラブ間で交渉を進めていくうちに、決断は高山本人の気持ちに委ねられた。2週間ほど悩んだものの、揺れ動く心も次第に「もう一度、声をかけてもらえて嬉しい」という思いへと変わっていった。
 
「(吉田)達磨さんは、俺が思うようにするのがベストだと言ってくれました。そのおかげで、自分の気持ちをしっかり考えられたので、とても感謝しています」(高山)
 
 大倉智取締役社長は、「我々フロントは常々、『また戻って来たらいいよね』という話はしています。とはいえ、選手として脂の乗っているバリバリの時期に、それが実現できるとは思いませんでした」と振り返る。こうして、高山は再び湘南でプレーすることとなった。
 
 2年ぶりにJ1の舞台に挑むチームにあって、高山にかかる期待は大きい。限られた予算のなか、移籍金を支払って獲得した背景はもちろん、クラブが求める「走る意欲、なにかを証明したい意欲に溢れる選手」という像にも当てはまる。
 
「レイソルの選手は、自分の目の前の相手に負けない強さを持っているし、勝ち方をよく知っている。『勝者のメンタリティ』を肌で感じられたのは、大きな財産になりました。それをチームに還元していきたいと思います」(高山)
 
 ネルシーニョ監督(現・神戸監督)の下、ウイングバック、シャドー、SBと変動するポジション起用に適応したユーティリティ性には、曺監督も「(柏という)厳しい環境で1年間戦い抜いたことで、責任感が増して、プレーヤーとしての幅も広がったと思います」と太鼓判を押し、「彼は"ベルマーレのDNA"をよく知っている選手。僕が考えていることは、なにも言わなくても分かるはず」と信頼を寄せる。
 
「自分も昨年一年、ただサッカーをしていたわけじゃありません。J1で自分が経験してきたことは必ず活かせるはずです。完全移籍して、1年で復帰したという意味でも、今年は"勝負の年"。自分の思ったとおりにいかないシチュエーションもたくさんあると思うけど、一喜一憂せず、ブレずに1年間やっていけば、チームとしても、個人としても成長していけると思います」(高山)
 
 愛着のあるクラブ、そして気心知れた仲間たち――。背番号は「一からのスタート」を意識して、プロ1年目に着けていた23番を選んだ。迎える2015年シーズン、かつてのように、ホームのShonan BMWスタジアム平塚を所狭しと駆け回る高山の姿が見られるはずだ。
 
取材・文:小田智史(本誌編集部)
 
PROFILE たかやま・かおる/1988年7月8日生まれ、神奈川県出身。ゴールハンターユナイテッド―川崎U-15―川崎U-18―専修大―湘南―柏―湘南。J1通算64試合・8得点、J2通算73試合・15得点。リーグトップクラスのスピードと運動量で、サイドを活性化するアタッカー。2014年シーズンを柏で過ごし、今季から古巣・湘南に復帰を果たした。

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