【アジアカップ 識者の視点】勢いに乗せたら厄介なヨルダン サイドでのボール保持がカギに

2015年01月20日 熊崎敬

避けたいのは撃ち合いのような展開。

過過去の対戦成績は1勝3分け1敗と互角。ブラジルW杯予選で敗れているヨルダンは、決して侮れない相手だ。 (C) Getty Images

 引き分け以上でグループ首位通過が決まるヨルダン戦。過去の対戦成績は1勝3分け1敗と互角で、決して侮れない。
 
 アジアカップでは2004年中国大会の準々決勝で対戦し、このときは薄氷のPK勝ち。11年カタール大会でもグループリーグで対戦したが、終了間際の吉田のゴールで引き分けに持ち込むのが精いっぱいだった。ブラジル・ワールドカップの予選でも埼玉では6-0と圧勝したが、敵地アンマンでは1-2と黒星を喫している。
 
 現役時代、チェルシーやACミランで活躍したヨルダンのウィルキンス監督は、「日本は才能に満ち溢れたチーム。多くの選手がヨーロッパでプレーしていて、ミランでプレーする本田、マンチェスター・ユナイテッドでプレーした香川がいる。中東勢はパワーやフィジカルが東アジア勢よりも劣る。ヨルダンの選手たちは湾岸諸国でプレーして、ヨーロッパには出ないんだ」と語り、力の差があることを認めた。
 
 日本は過去、ヨルダンのカウンターに苦しめられてきた。ヨルダンは日本ほど上手くないが、一人ひとりが球際に強く、突破力を備えている。勢いに乗せたら、かなり厄介なチームだ。このヨルダンを抑えるには、サイドで安定してボールを保持することがカギになる。
 
 サイドが重要なのは、中央に比べてボールを失っても一気に大勢の選手が置き去りにされるリスクが低いからだ。昨年12月のJ1昇格プレーオフでも、1点をリードした山形がサイドを起点にボールを回し、危険なカウンターを回避した。
 
 右の本田と酒井、左の乾と長友が落ち着いてパスをつなぐようなシーンが多ければ、日本は自分のリズムでゲームを運んでいると考えてもいいだろう。
 
 反対に日本にとって避けたいのは、ボールがどこにも収まらない撃ち合いのようなゲーム。ボールが落ち着かなければ不確定要素が入り込む確率が高くなり、ゴール前で致命的なミスが生まれることも考えられる。
 
 イラク戦で見せたようなスピーディでミスの少ないパス回しができるか、それがひとつのポイントになりそうだ。
 
 試合会場のメルボルンがブリスベンに比べて湿度が低いことは、日本にとって好材料。ただ、その一方で気になることがある。それは選手層の薄さだ。
 
 過密日程と気候変動の激しい中での3試合目では、怪我人が出ないとも限らない。レギュラーと控えの格差が顕著な日本は、主力にひとりでも故障者が出たらたちまちピンチになる。特に今野が負傷したことで、長谷部にかかる負担は恐ろしく増すことになった。
 
 アジアカップという「悪路」を走り抜くには、多くのタイヤが必要だ。だが、日本にはスペアが少ない。このヨルダン戦を乗り切っても、この不安は先々、大きくのしかかることになるだろう。
 
 アギーレは、このチーム最大の弱点をどうカバーするだろうか。
 
文:熊崎敬
 
【アジアカップ】ヨルダンとの死闘を回顧|04年大会・準々決勝
 
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