【アジアカップ激闘録】因縁浅からぬヨルダンとの熱戦|11年大会・グループリーグ「免れた大会最初のアップセット」

2015年01月19日 週刊サッカーダイジェスト編集部

「悪くなかった」日本に待ち受けていた落とし穴。

攻守に存在感を発揮した長谷部。終了間際に絶妙なクロスで吉田のゴールを導いた。 (C)SOCCER DIGEST

 日本にとってヨルダンは、記憶に残る熱戦を繰り広げてきた因縁の相手だ。
 
 アジアカップでは過去に二度対戦。守護神・川口の神がかり的なセーブで絶体絶命の窮地を脱したPK戦での死闘が語り草となっているのは、2004年中国大会の準々決勝だ。
 
 カタールでの前回大会では、今回と同様グループリーグでぶつかり、日本は大いに苦しめられた。吉田麻也の起死回生の同点ヘッドが決まったのは、ロスタイムという際どい勝負だった。
 
 週刊サッカーダイジェスト2011年1月25日号より、11年大会の対戦(1-1)を振り返る。
 
――◆――◆――
 
 油断していたわけではなかった。前日には「ビデオを見てスカウティングは済ませている」と長谷部が語ったように、カウンターには細心の注意を払っていた。だが、気が付けば、敵将ハマドが練ったシナリオの上で踊らされ、日本は悲劇の主人公を演じさせられるところだった。
 
 1月9日、16時15分。首都ドーハ北部に位置する多目的競技場、カタール・スポーツクラブでキックオフされたゲームは、戦前の予想どおり一方的な日本のペースで進んだ。
 
 4分には長谷部の右からのクロスがクリアされたところを、遠藤が素早く左へ展開して揺さぶりをかける。7分には長谷部、本田圭、前田とワンタッチでつないで、今度は中央からフィニッシュまで持ち込んだ。たとえボールを失っても、ヨルダンに3回以上パスをつながせない素早い寄せで奪い返した。
 
 長谷部は言う。
「入り方は決して悪くなかった」
 だが、そこに落とし穴はあった。
「パスがつながるから、つい丁寧にやろうとしてしまった。ボールを持てるから、考える時間も長くなってしまったんだと思う」
 
 次第に鈍るパススピード。サイドチェンジにも時間が掛かるようになり、香川が「各駅停車のよう」と表現した足下でつなぐパス回しは、ヨルダンの敷いた網に引っかかる回数が増えていく。
 
 日本にとって不運だったのは、24分の吉田のゴールが取り消されたこと。CKのクリアボールを長谷部がボレーで叩き、GKが弾いたところに吉田が詰めてネットを揺らしたが、オンサイドだったにもかかわらず、副審の旗が揚がったのだ。こうして嫌な流れに拍車が掛かった。

次ページ吉田の“3度目”のゴール。

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