【アジアカップ】エゴを出してこそゴールは生まれる――武藤嘉紀に求められる積極性

2015年01月15日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

「チームに勢いをもたらすようなプレーをしたい」

積極性を欠いたパレスチナ戦のプレーを反省。武藤に必要なのは健全なエゴイズムだ。 写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 協調か、エゴか──。おそらく武藤嘉紀はその間で揺れている。
 
 パレスチナとの初戦は、4-0とリードした58分にピッチに立った。だが、シュートやドリブルに行っていい場面で、いずれも安全策のパスを選択した。2014シーズンのJ1で新人最多タイの13ゴールを決めた思い切りの良さが、なぜか消えていた。
 
「パレスチナ戦では、もっと積極的に行かないといけなかった。4-0からの投入にもかかわらず、攻撃を活性化できなかった。やはり積極性を失ってしまうと、自分の良さはなくなってしまう。初戦で大会の雰囲気を味わえたので、次からは言い訳なしで持ち味を発揮したい」
 本人の口から漏れたのも反省の弁だった。
 
 アジアカップは「総力戦」だと、キャプテンの長谷部誠は語る。たしかに、前回大会は途中出場の選手が次々と活躍して頂点を極めた。
 
「カタール大会は全員で勝ち取った優勝だと聞いています。途中から出てきて流れを変えたり、接戦の試合で勝負を決められる選手は間違いなく必要ですから、初戦のような消極的なプレーはもうしてはいけない。チームに勢いをもたらすようなプレーをしたい」
 
 パレスチナ戦以上に厳しいマークが予想されるイラク戦で、はたして武藤は存在価値を示せるのか。
 
 若さゆえの暴走があっていいと思う。プロ1年目のFC東京でゴールを量産しはじめたのは、行く時は行くという"エゴ"を前面に出すようになってからだ。そして、「パスを出して失敗するより、自分でチャレンジして失敗したほうが納得できる」と、さらりと言ってのけた。武藤に必要なのは、こうした"健全なエゴイズム"だ。
 
「代表戦で久しぶりにゴールが欲しいのでは?」という質問に対し、笑顔でこう答えた。
 
「遠ざかっているので、そろそろ決めて、自分自身の流れも良くしていきたい」
 
 そう、エゴを出してこそ、ゴールは生まれるものだ――。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト)
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