【高校選手権】星稜 4-2 前橋育英|「去年がなければ今がない」初戦退場のエース森山泰希が信念の決勝弾!

2015年01月12日 安藤隆人

「スタンドから仲間の頑張りを見て、もっと頑張らないといけないと思った」

延長前半5分に、決勝点となる左足のシュートを決める森山。振り向きざまに放ったシュートがネットに突き刺さった。(C) SOCCER DIGEST

 これまで無得点だったエースが、最後の最後で吠えた。
 
 星稜のエースストライカー・森山泰希は、昨年からレギュラーを務め、前回決勝の富山一戦では、一時リードを2点に広げるゴールを決めている。
 
 今回はエースとして前線に君臨し、これまでもチームを救うゴールを挙げてきたが、この選手権では初戦の鹿児島城西戦で、後半早々に2枚目のイエローカードを受けて退場。不運な判定でもあったが、スタートでいきなりつまずいてしまった。
 
 しかし、仲間がリベンジの場を作ってくれた。10人のビハインドを耐え凌ぎ、PKの末に鹿児島城西を下すと、出場停止となった3回戦では、難敵・米子北を相手に2-1の勝利を収め、準々決勝の舞台に導いてくれた。
 
「スタンドから仲間の頑張りを見て、俺ももっと頑張らないといけないし、貢献しなければいけないと思った」
 
 強い気持ちで臨んだ準々決勝・履正社戦。ゴールこそなかったものの、「自分ができるのは積極的なチェイシング。少しでも後ろの負担を減らしてあげたいという一心だった」と、前線から果敢なプレスでファーストディフェンダーとしての役目を果たした。同様に、準決勝の日大藤沢戦でもチームプレーに徹する森山の姿があった。
 
 そして、決勝戦。90分間、背番号11はまるで自分の役割に没頭しているかのように、前線から前橋育英守備陣にプレスを掛け続けた。そしてボールを受けると、タメを作り、両サイドや2トップのパートナーである大田賢生がより攻撃しやすい環境を作った。
 
「あくまで僕の役目はチームに貢献すること。ゴールよりもチームのために何でもしたいという気持ちが強いんです。でも、ゴールを狙ってないわけではなくて、チームのためにやるべきことをやってこそのゴール。だから運動量を落とさずにやることを意識していました」
 
 決してエゴに走らず、謙虚にそして犠牲心を持ってプレーし続けた。そして勝利の神様は、最後の20分で彼に微笑んだのである。
 
 2-2で迎えた延長前半5分、クリアミスが森山の前にこぼれてくる。これを受けた森山は、ゴールに向かって左足を振り抜いた。矢のようなボールが、ゴールに突き刺さった。
 
 今大会初ゴールが値千金の決勝弾となった。さらに延長後半10分には、右サイドでボールキープしていたMF藤島樹騎也からパスを受けると、ペナルティエリア右の位置から右足を一閃。弾丸ライナーがゴールに突き刺さった瞬間、勝負は決した。
 
 昨年の悔しさを晴らした星稜が、全国制覇を果たした。河崎護監督の突然の不在という予想外のアクシデントに遭遇したチームが、初戦でエースの退場というさらなる予想外の事態に陥りながらも、そのエースの決勝ゴールで初優勝を遂げた。しかし、ドラマのような展開は間違いなく、悔しさを糧にした選手たちの力、信念がもたらしたものだろう。
 
「去年がなければ今がない。これほど監督のために、この仲間とともに勝ちたいと思ったことはなかった」
 
 勝利の神様に見初められた森山の満面の笑みが、チームに最高のグランドフィナーレをもたらした。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
 
■決勝の結果
星稜(石川) 4-2 前橋育英(群馬)
得点者/星=前川(前半11分)、原田(後半19分)、森山×2(延長前半5分・延長後半10分)
      前=野口(後半8分)、渡邊(後半10分)

【写真で振り返る】星稜 4-2 前橋育英
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