【高校選手権】決勝プレビュー|前橋育英-星稜 ともに初優勝を目指す一戦は「中盤の攻防」がカギに

2015年01月11日 安藤隆人

インターハイでは2-1で前橋育英が勝利しているが……。

準決勝の流経大柏戦で起死回生の一発を決めた前橋育英の主将・鈴木徳真。攻守の中心となる存在だ。(C) SOCCER DIGEST

 ともに勝てば初優勝。星稜にいたっては、全国大会での初タイトルとなる。高校サッカー界きっての名門校対決だが、どちらが新たな歴史を刻むことになるか。

【高校選手権photo】1月10日|準決勝
 
 この一戦のポイントは中盤の攻防だろう。
 
「最終ラインは初戦の反省を踏まえて、強気に行こうと決めています」と、DF岩浩平が語ったように、前橋育英は1-0で辛勝した初戦の初芝橋本戦ではラインが低く、相手の攻撃に押し込まれ、自慢の攻撃陣を活かしきれなかった。
 
 それを踏まえ、3回戦の山梨学院戦以降は、高いラインをキープ。中盤をコンパクトにして、鈴木徳真と吉永大志のダブルボランチが多くボールに触れることで、MF渡邊凌磨、坂元達裕、FW関戸裕希、青柳燎汰のアタッカー陣がより前を向いて仕掛けられるようになった。
 
 対する星稜は森山泰希と大田賢生の2トップと、平田健人と前川優太のダブルボランチの連係が、チームの肝となっている。守備的な平田と、攻撃的な前川。このコンビがチャレンジ&カバーを繰り返しながら、得点力の高い2トップをサポートする。そのため、こちらもCB鈴木大誠を中心に、高いラインをキープする。
 
 90分を通して、コンパクトな中盤が維持され、ダブルボランチ対決の様相が呈されるのか。それとも双方の2トップのどちらかが、積極的に裏を狙い、最終ラインを揺さぶって、中盤の均衡が崩されるのか。見所が満載だ。
 
 そして、両チームの準決勝の戦いぶりも非常に勢いのつく内容だった。前橋育英は流経大柏の前への圧力に屈することなく、最終ラインが奮闘。さらに試合終了間際、チームの精神的支柱の鈴木が今大会初ゴールを挙げて、土壇場で同点に追いついてからのPK勝ち。劇的な勝利での決勝進出となった。
 
 星稜は左MF藤島樹騎也と、右MF杉原啓太が躍動。藤島はドリブル突破が最大の武器だが、それを活かしきれていない試合もあった。だが、準決勝では持ち前のドリブル突破が相手の守備をこじ開けた。夏まで不動のレギュラーだった杉原は、準決勝で今大会初スタメン。精度の高い左足を披露し、1ゴールをマークした。さらに、このポジションにはU-16日本代表のドリブラー・阿部雅志がいる。決勝を前に、サイドが活性化したことは、非常に大きい。
 
 ここまでの勝ち上がりを見ても、ともに初戦は大苦戦(※星稜は初戦の鹿児島城西戦で、退場者を出しながら、0-0からのPK勝利)し、尻上がりに調子を上げてきた。両者が良いステップを踏んで臨む決勝戦だ
 
 ちなみに、両者はインターハイ準々決勝で対戦している。この時は2-1で前橋育英が勝利。「お互い連戦の疲労がある中での対戦だったから、参考にならない」(前橋育英・山田耕介監督)が、この時と大きく違うのが、星稜・河崎護監督がベンチに居ないこと。大会前に報道関係者が運転する車が事故に遭い、同乗していた河崎監督は、緊急入院と緊急手術を余儀なくされた。大会は木原力斗監督代行が指揮を執っている。
 
「河崎監督とは旧友で同級生。一緒に戦いたいが……」と、山田監督は無念をにじませたが、星稜は間違いなく河崎監督が作り上げたチーム。白熱した戦いになるのは必至だ。
 
 果たして、どちらが埼玉スタジアムで初の栄冠に輝くのか。決戦が今から楽しみだ。

文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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