【高校選手権】前橋育英 1(5PK4)1 流経大柏|歴史的勝利の裏で試練に立たされるエース

2015年01月10日 平野貴也

大会無得点に苦悩する渡邊…決勝で“いいとこ取り”はなるか!?

得点にこそ至っていないものの、そのシュートは間違いなく相手に脅威を与えてきた。星稜との決勝で、渡邊はみずからのゴールで日本一を決められるか。 (C) SOCCER DIGEST

 前橋育英が、ついに決勝進出を果たした。準決勝は過去に4度も敗れている「鬼門」だっただけに、これを突破した喜びはひとしおである。
 
 ところが、そんなチームのなかで表情の浮かない選手がいた。元U-17日本代表の背番号10、MF渡邊凌磨だ。両足で強烈なシュートを打つことができるチームの得点源で、左MFながらFWと巧みにポジションを交代し、相手の背後に抜け出る動きも見せるチームだが、今大会はここまで無得点である。
 
 そのことについて渡邊は試合後、「あとは点を取るだけ。正直、チームに迷惑をかけているので、恩返しをしたいというか……」と納得のいかない様子で語っていた。
 
 これに対して山田耕介監督は、「得点はないが、プレスバックの面で相当貢献してくれている」と献身性も評価している。とはいえ、エースの得点を期待していることは間違いない。準々決勝の前日には、食事中に盛り上がっていた攻撃陣グループに「点も取っていないのに、そんなに騒ぐ余裕はないはずだろ」と雷を落とした。
 
 渡邊は準決勝で得点こそなかったが、キレのあるプレーを見せていた。序盤から鋭いターンで相手のマークをはがし、強烈なシュートを浴びせて相手を脅かした。後半9分には、相手を振り切ってポスト直撃の惜しいシュートも放っている。攻撃面でも、貢献度は高いのだ。
 
 しかしエースである以上、4戦無得点という結果は無視できない。欲しくて仕方のないものに手が届かない……そのもどかしさについて渡邊は、「こんなに点が取れないのは久しぶりというか、初めてに近い。でも、ネガティブになっても意味がない。これは、自分しか経験できない試練だと思う。ひと皮むけて大きくなりたい」と語った。
 
 沈黙の続く渡邊だが、この前橋育英のエースには「大舞台に強い」という一面もある。高校総体や高校選手権の県大会決勝では、いずれもゴールを挙げた。チームメートの坂元達裕は、「決勝では必ず点を取って、いいところを持っていく(笑)」と信頼を寄せている。
 
 現状を不振と捉えているのは、渡邊自身だけなのかもしれない。準決勝の動きを見る限り、キレは増しているし、いつ両足の大砲が火を噴いてもおかしくないという期待も抱ける。
 
 前述の坂元の言葉を聞いて、「今回も(いいところを)持っていきますよ」と言い切った渡邊。チームは、準決勝という壁をついに打ち破った。次はみずからゴールを決め、母校に初戴冠を呼び込む番である。
 
文:平野貴也(フリーライター)
 
■試合の結果
前橋育英(群馬) 1(5PK4)1 流通経済大柏(千葉)
得点者/前=鈴木(後半45分) 流=小川(後半27分)
 
【高校選手権Photo】1月10日|準決勝
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