【高校選手権】準決勝第2試合プレビュー|流経大柏の超絶プレスか、前橋育英の多彩なパスワークか

2015年01月09日 平野貴也

ともに上り調子で迎える「実力校対決」。

ここまで3得点を挙げている流経大柏のFW高沢。高い決定力で決勝の切符を掴み獲れるか。(C) SOCCER DIGEST

 蘇えった超高校級プレスか、目覚めた虎のパスワークか――。準決勝第2試合は、両チームの真価が問われる一戦となりそうだ。
 
 7年ぶり2度目の優勝を狙う流経大柏(千葉)と、初優勝を狙う前橋育英(群馬)の関東勢対決。互いに3回戦までは本調子ではなく苦戦を強いられたが、準々決勝では流経大柏が立正大淞南に3-0、前橋育英は京都橘に4-0とそれぞれ快勝。ともに上り調子で迎えた実力校対決となり、見応えのある試合内容が期待される。
 
 流経大柏の持ち味は、並の高校チームでは歯が立たない超絶プレスだ。「18歳までしか、限界に挑戦する機会はない」と話す本田裕一郎監督の下で、精神的にも肉体的にも鍛え抜かれた集団は、極めてタフで力強い。
 
 とにかく相手のボールホルダーに自由を与えない。今大会、出色のプレーを続けるMF久保和己は「逆サイドのDFまで全部自分が追うつもりでやっている」と相手に何度切り替えされ、かわされようとも追いまくる覚悟を明かす。
 
 準々決勝では、守備面で特徴が似ている立正大淞南を強烈なプレスで粉砕。とりわけ、球際での寄せの厳しさは徹底されており、敵将の南健司監督が「スライディングの技術が高い。それも最終ラインのシュートブロックではなくて、中盤もしくはFWがコース(を狭める)スライディングを全部やって来る。あれは相手に相当なストレスになると思う。それも、ほぼノーファウルだった」と感嘆の声を上げたほどだ。
 
 ただ、奪ってからの攻撃はやや単調で、MF小川諒也のFK、FW高沢優也の決定力頼みの部分がある。そのため、なおさら守備からリズムを作れるかどうかがポイントとなる。
 
 一方の前橋育英も3回戦まではセットプレーに頼りがちだったが、徐々に攻撃にバリエーションが出てきた。準々決勝では3年連続の4強入りを狙った京都橘を相手にして、MF鈴木徳真を中心とする見事なパスワークで翻弄。ほとんどボールを奪われずに4点を叩き込んだ。
 
 京都橘の米澤一成監督も「ボランチあるいは真ん中の選手に上手くはたかれて、(狙いどころを)ハズされて、そこから起点を作られて、ほかの選手が走り出すタイミングを作られた。分かっていたけど、やられてしまった。取りどころが後ろになり、最終ラインは手前を使われる可能性も、裏に走られる可能性もできてしまった」とお手上げだった。
 
 京都橘戦では、GK吉田舜のキック精度を活かしたカウンターが炸裂し、攻撃陣も流れのなかで得点できたことで、チームには勢いが出てきた。守備ブロックを築いて待ち構える京都橘とは異なり、積極的にボールを奪いにくる流経大柏のプレスをどのようにかいくぐるのかが見ものだ。テンポで上回るのか、ロングパスで振り回すのか、使い分けが鍵になるだろう。
 
 また、前橋育英は過去4度も準決勝で敗れており、鬼門突破にかける想いは強い。ここまで無得点の渡邊凌磨が虎視眈々と大勝負でのゴールを狙っており、エースの一撃で歴史を変えたいところだ。
 
 どちらも選手層が厚く、武器は多彩。いかなる時間帯でも高い集中力が必要だろう。しかし、なかでも前橋育英がボールを保持した場面で、流経大柏のプレスがその攻撃を噛みちぎるのか、それとも前橋育英のパスワークがそのプレスを鮮やかにかわすのか。そこが最大の見どころになるに違いない。
 
文:平野貴也(フリーライター)
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