【高校選手権】東福岡 2-0 三鷹|注目度ナンバーワン! 赤い彗星の10番・中島賢星がエースの仕事で初戦突破!!

2014年12月30日 安藤隆人

ここぞの場面で見せたエースの技と意地

東福岡の攻撃をリードする中島。エースの仕事でチームを勝利に導いた。(C) SOCCER DIGEST

「緊張しました。スタンドを見た瞬間にちょっと飲まれてしまって……。ボールがうまく足に付かなかった」
 
"赤い彗星"の異名を持つ東福岡のナンバー10中島賢星は、試合後率直に心境を口にした。インターハイチャンピオンで開幕戦、そして自身もJ1の横浜入りが決まっているとあって、彼に対する注目度は非常に高いものがあった。
 
 チケットが完売し、満員のスタジアム。しかも、世間の目は『勝って当たり前』のなかで、プロ内定選手にふさわしいプレーを見せなければいけない。分かっていたが、実際にピッチに立って、その大きさを痛感することになった。
 
 都立三鷹が高い集中力で機敏な動きを見せたこともあり、チームもなかなかチャンスを活かせず、苦しい展開が続いた。8分、25分の決定機も三鷹GKの武田啓介のスーパーセーブに阻まれ、40分にはMF近藤大貴のミドルシュートがバーを叩くなど、前半をスコアレスで折り返した。
 
「正直、日章学園戦のことが頭をよぎりました……」
 昨年の3回戦・日章学園戦で、圧倒的に攻め込みながらもゴールが奪えず、0-0のPK負けを喫した。あの悪夢が頭に浮かんだが、これでエースにスイッチが入った。
 
「あの悪夢を絶対に繰り返してはいけないと思った。もう自分が点を取るしかないと強く思った」
 この思いが前半に自身を苦しめていた緊張という名の鎖を引きちぎり、自らの手で試合を動かした。後半開始早々の2分、左CKを得る。
 
「いつもは加奈川(凌矢)と小笠原(佳祐)が中に飛び込むのですが、自分が決める気持ちが強くて、彼らにはファーにいてくれと言いました。あの2人がファーにいることで、真ん中が空くと思った」
 DF末永巧のライナーのキックが、ゴール前に一直線に届くと、そこに182センチの身体を折り畳むように走り込んだ中島が、ドンピシャのタイミングでピンポイントヘッド。叩き付けたボールは、ワンバウンドでゴールに吸い込まれた。
 
 エースによる待望の先制点で、チームはようやく落ち着きを取り戻した。後半19分に再びCKから小笠原がヘッドで押し込んで2−0。これ以上スコアは動かなかったが、プレッシャーをはね除けて勝利を掴んだ。
 
 実は中島がヘッドで決めた数は、あまり多くない。公式戦でのヘディングでのゴールは、3年間で片手で収まる程度しかない。だが、決してヘッドが苦手と言う訳ではない。
「賢星はね、本当はヘッドがうまいんだよ。ボディーバランスがいいからね」と志波芳則総監督が話していたように、あのヘディングシュートは苦手な選手がする代物ではなかった。
 
 まさに『ここぞ』と言う場面で見せたエースの技と意地。中島賢星の最後の戦いは、いい形でスタートを切った。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)                                                                
 
■開幕戦の結果
東福岡 2-0 三鷹
得点者/東=中島(後半2分)、小笠原(後半19分)

【高校選手権Photo】12月30日|開会式・開幕戦
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