【千葉】キャプテン山口慶が現役を引退 監督からの信頼も厚かった31歳の決断

2014年12月26日 本田健介(サッカーダイジェスト)

右SBに新境地を開いたシーズンだったが…。

昇格プレーオフ決勝でも右SBとしてスタメン出場した山口。J1昇格は果たせなかったが、その果敢なプレーぶりは千葉、名古屋のファンの心に刻まれたはずだ。(C) SOCCER DIGEST

 12月25日、今季千葉のキャプテンを務めた山口慶の現役引退が発表された。中学までを京都で過ごした山口は名古屋U18に進み、トップ昇格後はクレバーかつ戦えるボランチとして8年にわたって活躍。10年には前年J2に降格した千葉に移籍し、この5年、全力で昇格を目指してきた。
 
 特にこの1年は鈴木淳監督(6月23日に契約解除)に「彼はグループを作らないし、群れないので、中立的な立場で物事を言ったり考えたりできる」と、キャプテンに指名され、チームのためにピッチ内外で仲間を牽引してきた。
 
 しかし「自分のスタイルでリズムを作っていきたい」と語っていた熱い想いとは裏腹にもどかしい日々もあった。序盤戦は佐藤勇、佐藤健、兵働ら強力なライバルを退け、レギュラーとして活躍するも、7節の湘南戦で負傷すると、仲間たちの姿を見守り続ける歯がゆさを味わった。
 
 風向きが変わったのは8月。戦列復帰し、28節・岡山戦からベンチ入りすると、やや調子の落ちていたチーム状況に関塚隆監督(7月1日に就任)は、31節・北九州戦で山口を右SBで起用。この一戦を機に、山口は豊富な運動量、粘り強い守備を活かし、新たなポジションを勝ち取った。
 
 そしてチームもこの北九州戦後、終盤11試合で7勝3分1敗と、猛スパート。磐田を抜いて3位でフィニッシュし、昇格プレーオフは決勝戦からの出場、そしてドローでも昇格を達成できる大きなアドバンテージを得た。
 
 迎えた山形とのプレーオフ決勝。千葉は、例年以上に万全の態勢で試合に臨んだものの、37分にセットプレーの流れから失点してしまう。この日も右SBで先発した山口は果敢なオーバーラップを繰り返したが、1点が遠く、結局J1への切符を今季も掴み損ねた。
 
 悔しさを背に、足早にスタジアムを後にした25日後、引退を発表した山口。「これまで真摯にサッカーに打ち込み、情熱をかけてきましたが、自分の描いていた大きな世界、高い目標にこれ以上走っても届かないなと力のなさを痛感し、サッカー選手としての人生に一度区切りをつけることといたしました」と葛藤を表わした。
 
 ただその一方で、「13年間で得た経験すべてが自分の力となり財産となっています。今後はまずは何ができるのかを考えるために色々なことに挑戦し、さらに力をつけていけるよう努力していきたいと思います。そして、いつか成長させていただいたこのサッカー界にたくさんのものを返せたらと考えています」と、31歳の自身の未来へ前を向く。
 
 常に全力で戦い、背中で仲間たちを引っ張ってきた背番号13。新たな門出には大きな期待が寄せられる。
 
文:本田健介(週刊サッカーダイジェスト)
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