ブラジリアンMFヘニキが窮地の栃木を救う。“ラモス岐阜”時代以来の前線にコンバートされた理由

2019年11月15日 桜井 誠

前線へのコンバートは実は二度目

本職はボランチも、今季は1.5列目で起用される。チームに不可欠な戦力になっている。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 J2も残すところ2試合。21位の栃木は降格圏脱出に向けた水際の戦いを続けている。39節は後半アディショナルタイムのゴールで、新潟から劇的勝利。40節は2位の大宮と引き分け、ここ2試合で強豪チームから勝点4を積み上げた。20位の鹿児島との勝点差は3まで縮めたが、1試合も落とせない状況に依然変わりはない。

 そんな窮地を打開するためのキーマンとされるのが、トップ下を務めるブラジル人MFヘニキだ。本来はハードマークを身上とする屈強なボランチだが、厳しい戦いが続く中、チームはその「強さ」を攻撃力アップにもつなげようとしている。

「自分たちの順位で必要なのは勝利。毎試合、決勝戦のつもりで戦っている」とヘニキ。しっかりと見開いた瞳には強い覚悟が表われている。
 
 9月、33節のホーム鹿児島戦。スターティングメンバーには、ヘニキ、枝村匠馬、ユウリとボランチ3人の名前が並んだ。試合が始まってみると、ヘニキが前線でボールに絡む場面が多く、3-1で勝利を収めた試合後、田坂和昭監督は「トップ下に置いたヘニキがゲームのポイントだった。バイタルを攻略してくる相手の対応を任せた。そのタスクをよくやってくれた」と高く評価した。

 奇襲とも映ったヘニキの1.5列目起用だったが、本人は「味方をサポートする役割がメイン。攻守でスピードのある対応を求められている」と献身的なプレーに終始した。

 攻撃的ポジションへのコンバートは実は二度目で、2015年シーズン、岐阜時代に経験している。チームがJ2の残留争いをする渦中でFWに抜擢され、当時のラモス瑠偉監督から得点を求められた。現在の立ち位置は、その状況とも重なるだけに「勝利へ向かい監督が示すプランをやっていくだけ」とのスタンスを愚直に貫いている。

 昨季、岐阜から栃木へ移籍してきた。延べ3シーズン在籍した岐阜では、終盤、思うように出場機会を得られなかったが、栃木では移籍1年目でリーグ戦38試合に出場。積極的に前線に飛び出し、攻撃に絡むボランチは相手チームには脅威となった。

 田坂監督が就任した今季は途中出場が続いた時期もあったが、シーズンを通して稼働。今ではチームに欠かせない存在になっている。「出場時間が伸びない時期も、監督には『必要な存在』と言われ続けてきた。要求に応えられるようプレーをするだけ」と迷いはない。
 

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