「我々は常に辞表を持って仕事をしている」J3降格が迫る栃木・田坂監督の苦悩は報われるか

2019年10月24日 桜井 誠

就任会見では躍進を誓っていたものの…

今季から栃木を率いる田坂監督。コンセプトをなかなか浸透させられず苦難が続いている。写真:田中研治

 残り5試合で21位。2度目のJ3降格も現実的なところまで迫ってきたリーグ最終盤戦。栃木のこの窮状を一番想定外として捉えているのは、田坂和昭監督本人かもしれない。

「ここにきて気持ちを高めている選手たちのグループができ、そこに入ろうとしている選手も出始めている。いい傾向だ。彼らがチームを加速させてくれるはず」

 直近の琉球戦には敗れたが、残留を目指す眼差しには力が宿っている。

 今季、横山雄次監督に代わって指揮官の座に着いた。J3の福島を指揮した2017、18年は目立った実績を残せなかったが、栃木は元日本代表の肩書きを持ち、豊富な指導者キャリアを持つ田坂監督に、前年17位からの浮上を託した。昨年12月の就任会見では「栃木は堅守速攻のイメージを持っている。今までのベースを保ちつつ色々なエッセンスを入れていく。選手にはまずはハードワークを求めていきたい」と熱く語り、栃木の躍進を誓っていた。
 
 しかし、リーグが開幕すると、チームは序盤から不調を極めた。特に攻撃のひ弱さはチームの戦いぶりにも大きな影を落とし、得点どころかいい形でシュートに持ち込む場面すら作れない。

 12節にはリーグ最下位に陥落。1試合で最悪の状態から脱することはできたが、それでも中位へ駆け上がるきっかけは掴めないまま。26節に降格圏の21位に落ちると、現在まで危険水域から抜け出せずにいる。32節、福岡に0-1と敗れた後の会見で指揮官が、「我々みたいな立場の人間は常に辞表を持って仕事をしている。なんとか戦おうとやっているが、最後はクラブの判断に従うしかない」と絞り出す場面もあった。

 33節、鹿児島戦。それまで「相手チームが脅威に感じる選手を」と実績重視の選手起用をしていたが、「上手い下手関係なく、エンブレムに誇りを持って戦える選手をピッチに立たせた」と方向性を変え、3-1という結果につなげた。土壇場でやっと光明が差したかに見えたが、そこからも勝点3は挙げられず、チームの苦闘は続いている。

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