観客なし、テレビ中継なし、ゴールもなし! 異例づくしだった“北朝鮮vs韓国”の全容が明らかに【W杯アジア予選】

2019年10月16日 サッカーダイジェストWeb編集部

30分前になって告げられた「無観客試合」

どんよりと暗い観客席。29年ぶりのピョンヤン南北決戦は無観客で開催された。(C)Getty Images

 29年ぶりとなったピョンヤンでの南北決戦は、痛み分けのスコアレスドローに終わった。

 10月15日に行なわれたカタール・ワールドカップ・アジア2次予選、北朝鮮対韓国の注目ゲーム。韓国はソン・フンミン(トッテナム)やファン・ウィジョ(ボルドー)、キム・ヨングォン(ガンバ大阪)らが先発を飾った一方、北朝鮮もエースのハン・グァンソン(ユベントスU-23)がスタメンで登場した。

 はたして、どんなゲームが繰り広げられたのか。実のところ、試合展開についてはまるで伝えられていない。なぜならテレビ中継が許されず、韓国メディアの取材もいっさいシャットアウトされていたからだ。キックオフ30分前になって無観客試合となったことも急きょ告げられたという。

 不可思議な一日を、韓国全国紙『朝鮮日報』や『中央日報』、全国スポーツ紙『スポーツソウル』などが詳報している。

 韓国国内でワールドカップ予選の試合がライブ中継されなかったのは、34年ぶりのアクシデント。北朝鮮入りできなかったサポーターをはじめ、ファンたちはAFC(アジア・サッカー連盟)の公式サイトに掲載されるテキスト速報に釘付けだったという。だが90分間で更新されたのはわずかに「9行」。選手交代と警告を知らせる項目のみだ。

 韓国の各メディアは大韓サッカー協会からの現地情報だけが頼みだった。しかし北朝鮮当局によってすべてのスタッフの携帯電話は取り上げられ、金日成スタジアムのインターネット状況はすこぶる悪いため、なんとかAFCの協力を得て、クアラルンプール経由でソウルに情報は配信されたようだ。

 
 パウロ・ベント監督の記者会見はどうやら実施されなかった模様。試合前日の会見では、北朝鮮の報道陣が5名出席したのみで、それも記者なのか当局の人間なのか、見分けがつかなかったという。もちろん、選手たちや監督のコメントは北朝鮮から出国するまでいっさい拾えていない。

 無観客試合にすると発表されたのは、試合開始の30分前。チケットは配り切られ、当日は4万大観衆で埋め尽くされると北朝鮮当局は豪語していたが、最終的にはセーフティーな選択をしたことになる。

『中央日報』は2005年、ドイツ・ワールドカップ最終予選での苦い記憶が蘇ったのかもしれないと推測した。「金日成スタジアムでのイラン戦で、会場に入れなかった観客が半ば暴徒化し、イランのチームバスを取り囲んだ。FIFA(国際サッカー連盟)は事態を重く受け止め、ホームゲーム1試合の開催を剥奪したのだ」と説明する。そしてかの有名な、ジーコジャパンとのバンコク決戦に至ったのである。

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