「センターバックで負けた試合」を境に失点数が激減!鹿島、首位浮上の立役者・犬飼智也が示した姿勢

2019年10月09日 岡島智哉

3失点を喫して敗れたアウェーでのFC東京戦が転機に

首位浮上を決めたC大阪戦で、攻守にわたる活躍を見せた犬飼。屈辱を糧に成長した姿を見せている。(C) SOCCER DIGEST

 勝てば首位浮上の大一番は、「センターバックで勝った試合」だった。

 4日、5連勝と絶好調のセレッソ大阪の本拠地に乗り込んだ鹿島は、6分に決勝点を挙げた。永木亮太が蹴ったCKは、ファーサイドで待つ町田の頭へ。ボールが頭上を通過した犬飼は、すぐに体勢を整え、ゴール方向にへそを向けた。町田が身体をひねりながら懸命に折り返したボールを、マテイ・ヨニッチに競り勝った犬飼が頭で捉えた。ネットを揺らした本人は「うまく対応できて良かった」と満足げな表情を浮かべた。

 守備でも犬飼を中心に90分耐えた。システムの変更や交代選手に臨機応変に対応。ボールを支配されながらも、後半に限れば、許したシュートはわずかに1本だった。犬飼は「(クォン)スンテが救ってくれた部分もありましたが、苦しいゲームをものにできた自信はある。このまま無失点を継続しないといけない」と力を込めた。

 今やチームにとって欠かせない存在となった。空中戦も地上戦も強く、正確なパス出しやサイドハーフへのフィードなども得意とする。昨年に比べて格段にミスが減り、安定感が増した。

 背景には「センターバックで負けた試合」があった。7節のアウェー・FC東京戦。永井謙佑、ディエゴ・オリヴェイラの2トップのスピードとパワーに押されて3失点。コンビを組んだ町田とともにミスを重ね、重ねるほどに自信を失い、サポートの声が出なくなった。不思議と鹿島に勝ったチームはそのまま勢いを加速させ、連勝街道を突き進むことが多い。FC東京も例外ではなく、そのまま首位を走り続けた。
 
 この試合後のことをセンターバック出身の大岩剛監督が明かしている。
「彼らを擁護するつもりはないけど、誰もが通っている道だから。源(昌子)もナオ(植田)もそう。若い選手で、最初から完璧なパフォーマンスをする選手はいなかったわけで。まだまだ町田しかり犬飼しかり、学んでいく、逃げたくなるような状況かもしれないですけど、その中で自分から立ち向かって行く姿勢、こういう時ほど自分たちの立ち振る舞い、言動、姿勢が大事だと伝えた」
 
 この屈辱から逃げず、学び、立ち向かった。FC東京戦後、リーグ戦21試合でわずか3敗。複数失点もわずか4試合だ。昨季は28節終了時で34失点だったが、今季は24失点。右SBに負傷者が続出し、ボランチが本職の永木亮太が回ることが多く、左SBも安西幸輝のポルトガル移籍、山本脩斗の相次ぐ負傷と、厳しいやりくりが続いた中でこの数字は、犬飼を中心としたセンターバック陣の奮闘によるところが大きい。長所と短所がはっきりとしていたブエノの長所を伸ばし、短所にフタをできる点も見逃せない。

 2位と勝点2差の首位で残り6試合。犬飼は「(日程が)終わった時に一番上にいるのがこのチームの使命」と気を引き締めた。首位の座は、犬飼を中心に守り抜く。

取材・文●岡島智哉(報知新聞)

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