怪我人続出、支配率35%、枠内シュートは1本…劣勢でも勝ち切った“首位”鹿島のしたたかな戦いぶり

2019年10月07日 岡島智哉

C大阪戦は勢いに押され後手に回る展開が続いたが…

28節終了時で首位に立った鹿島。C大阪に敵地で1-0と勝ち切った。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 シーズンは長い。どんなに監督が優秀で、各ポジションに代表級が揃い、あらゆる運に恵まれたとしても、チームに必ず波はある。

 ひとつのポジションに怪我人が集中することもあれば、用意周到だったはずの戦術が機能せず、キーマンが徹底マークで封じられることもある。何もかもがうまくいく時に勝点3を積めるのは当たり前。うまくいかない時でも内容のない試合で結果を残し、波を小さくできるチームこそが本当の強いチームだ。


 6日のC大阪戦、鹿島は強かった。支配率35%、枠内シュート1本で1対0の勝利を掴んだ。開始6分にCKから犬飼智也のヘディングで先制に成功。5連勝中と目下絶好調だっ たC大阪の勢いに押され、後手に回る展開が続いたが、終わってみればクリーンシートで単独首位に浮上した

 三竿健斗、レオ・シルバの長期離脱に加え、小泉慶までもが体調不良で欠場。3人のボランチを欠いた。前日まで左MFで調整していた白崎凌兵を鹿島移籍後では初のボランチで先発起用し、中村充孝を左MFに置くスクランブル布陣。結果的に白崎は良さを出し切れず、まだ完全復帰とは言いがたい名古新太郎を途中起用せざるを得なかった。

 プレスもはまらず。右SB伊東幸敏、右MFセルジーニョ、右ボランチ永木亮太のトライアングルが飛び出してくる相手選手を捕まえられなかった。最終的に整備されたのは、58分に左MFの柿谷曜一朗が(なぜか)ベンチに下がってからだった。

 攻撃のキーマン・土居聖真は相手の鋭い寄せに苦しみボールを思うように受けられず、前を向いて回数は数えるほど。チーム得点王のセルジーニョも63分に負傷でピッチを去った。

 …と敗因分析のようだが、それでも勝ったのは鹿島だ。敗因になりえる事象を徹底的につぶした。6分という早い時間帯の先制に成功したことで、相手の好調ぶり、自軍のスクランブルぶりを自覚した上で、守備に重きを置いた戦いを貫いた。守備的な戦いは終盤に近づくとより顕著に。永木はテクテク歩いてCKを蹴りに行き、伊東はスローインのたびに水ゴクリと飲み、土居と遠藤はFKを蹴るふりをして壁を近づけ、主審に注意を促した。今季序盤は終了間際の失点で勝点を失うことも多かったが、シーズンも終盤にさしかかり、試合の締め方も心得つつある。
 
 ここからは「追われる立場」として、8節から首位を守ってきた2位FC東京、好調の3位横浜、直接対決を残す4位川崎らのプレッシャーを受けながらの戦いとなる。鹿島の首位浮上は2017年11月以来。王手をかけながらラスト2試合をともにスコアレスドローで終え、最終節で川崎にかわされ2位でシーズンを終えたあの屈辱の時以来だ。

 追われる身の苦しさ・難しさは十分にチームとして理解していることだろう。それでも永木亮太は「ここから勝ち続けるだけ。あとは自分たち次第」と言い聞かせるように語った。どんな荒波が押し寄せようとも、その場で修正し、ベストを尽くし、一戦必勝で勝ち続けるのみ。その先に、悲願のVが待っている。

取材・文●岡島智哉(報知新聞)
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