なでしこ、東京五輪へゴールラッシュのリスタート!熟練度を高めるレギュラー陣に割って入る存在は?

2019年10月07日 西森彰

返り咲きを図る田中美南のプレーに、指揮官は高評価

W杯後、初のテストマッチで快勝したなでしこジャパン。東京五輪へ好スタートを切った。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 10月6日、IAIスタジアム日本平で、なでしこジャパンの女子ワールドカップ・フランス大会終了後、最初のゲームが行なわれた。フランス・ワールドカップでは、ベスト16で敗退したなでしこジャパン。東京五輪へ向け、スタートとなるカナダ戦。試合を翌日に控えた前日練習の公開は冒頭だけだったが、大きな声と笑顔が印象的だった。


 レンヌの地で涙を流した選手、フランスの地を踏めなかった選手。立場の違いはあったが、それぞれの悔しさを乗り越えようとする前向きさを、指揮官は感じていた。
「やはり、フランスの地でああいう負け方をした選手たちの悔しさは、あまり表には出ませんが、身体の中に沁み込んでいて『もう一回立ち上がってやるんだ』というのが、明るい雰囲気の中にも感じます。そして、フランスに選ばれなかった選手からは『今度は自分たちがやってやろう』というのを感じます。どちらもポジティブな想いだろうと思っています」(高倉麻子監督)

 試合前から、東京五輪へのリスタートの意気込みを滲ませていたなでしこジャパンは、6分という早い時間に、岩渕真奈のゴールで先制。その後もゴールラッシュを続け、最終的に4-0のスコアで、FIFAランキング7位のカナダに圧勝した。

 序盤からペースを掴んだ一因は、左サイドで先発した宮川麻都の活躍だった。「サイドバックはビルドアップに参加することが重要だと思うのでセンターバックからボールを受けて、前へ運ぶ意識を大事にしました」と宮川。ワールドカップでは出場機会を得られなかったが、それは左SBに入った鮫島彩が安定したプレーを続けたから。その陰で必要な努力を続けてきたことを証明する、この日のプレーぶりだった。こなせるポジションも多く、来年の五輪に向けては、18人という狭い枠が、かえって彼女の可能性を広げている。

 一方で、激戦枠のFW陣に返り咲きを図るのが、田中美南。ピンポイントのゴールを奪えるストライカーだが、代表ではその仕事場にこだわるあまり、どんな状況でも、ゴール前に張り付くことが多かったが、この日は違った。
「今日は途中から出た(79分に岩渕と交代で出場)こともありますし、ゲームの流れを変えるプレー、チームとしての流れを自分から発信していきたいというところがありました」

 長い距離を走り、相手ボールホルダーへプレッシャーをかけた田中は、アディショナルタイムには右のスペースへ流れて杉田妃和からのパスを受けると、ゴール前に持ち込んでシュート。小林里歌子のダメ押し点を演出した。
「どんな状況でプレーするにしても、その状況にあったプレーができるというのがサッカー選手としては大事。今日の田中は、あの時間帯で『もう一回、前からエンジンをかけてほしい』『点が欲しい』ということを理解して、貢献してくれました」と、指揮官も高い評価を与えた。

 とはいえ、中島依美と菅澤優衣香のワンツーから岩渕のフィニッシュまで、流れるような展開で生まれた先制点が象徴するように、女子ワールドカップのレギュラー組の連係熟練度は、さらに高まっている。「状況にあったプレーができるかどうか」(高倉監督)というのが、18という狭き門へ挑戦する選手たちへ、指揮官が与えるキーワード。フランスまでの序列を崩し、東京五輪でポジションを勝ち取る選手は出てくるだろうか。

取材・文●西森 彰(フリーライター)

【なでしこジャパン PHOTO】日本4-0カナダ|強豪相手に大量得点で完勝!東京五輪に向け最高のリスタート!
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事