好調かに見えた神戸はなぜ14年ぶりの惨敗を喫したのか?実力者を揃えても解消できない問題とは…

2019年10月06日 サッカーダイジェストWeb編集部

ボールを走らせるのではなく人が走らされる展開になると、神戸の抱える問題が一気に表出する

 目を覆いたくなる光景が繰り広げられた。神戸が広島に今季最多6失点を喫する惨敗。今季初の3連勝を狙って敵地に乗り込んだが、待っていたのは2005年4月13日の川崎戦(1-6)以来14年ぶりとなる大量失点だった。

 今夏にトーマス・フェルマーレンや酒井高徳といった実力者を加え、3-5-2布陣の安定と足並みを揃えるように成績も上向いていた神戸だったが、再び守備面の課題を突き付けられた。

 広島の狙いは明確だった。神戸のウイングバックとセンターバック間や3バックのDF間、アンカーを務めるセルジ・サンペールの両脇といったスペースを巧みに突いた。序盤は神戸の右サイドに照準を定め、広島の森島司、柏好文らが執拗な仕掛けを繰り返した。開始30秒過ぎに神戸の右サイドから決定機を作り出すと、5分には同サイドを完全に攻略し、稲垣祥が先制点を奪った。

 神戸は19分に古橋亨梧のゴールで一時は試合を振り出しに戻したが、39分には左サイドで酒井とフェルマーレンの間にパスを通され、最後はがら空きとなった中央から、またも稲垣に決められた。神戸の飯倉大樹は「ダンクレーとトーマス(フェルマーレン)のところを上手く使われた。全てが後手後手になって、ボールも効率的に持てなかった」と振り返った。

 想定以上にボールを握られたことも誤算だった。アンドレス・イニエスタとサンペールを併用し、ボール保持に特化した戦術が持ち味の神戸だが、チームの長所はボールを失った途端に、機動力の欠如という短所に変わる。39分の失点もスペースに走り込んだ稲垣に対して、イニエスタやサンペールのブレスバックが見られなかった。ボールを走らせるのではなく人が走らされる展開になると、神戸の抱える問題が一気に表出する。やはり神戸はボールを握り続けなければならない。

 2-1の65分には大崎玲央が得点機会阻止で一発退場。レッドカードと引き替えに守ったはずの追加点を直後のFKで与えてしまった。それでも10人の数的不利にもかかわらず77分に田中順也のゴールで1点差に迫る。アディショナルタイムを含め15分以上を残し、勝点1も現実味を帯びてきたが、ここが分水嶺となった。

 山口蛍は「意識の問題で、3-2にして、いけるという雰囲気の前線と、これ以上やられたくないという後ろとのギャップがあったかもしれない」と語り、酒井も「3-2にしたところで流れを持っていかなければいけなかったが、意思統一ができなかったというか、自分も含めてポジショニングがアバウトになってしまった」と反省を口にした。ピッチ内の微妙な意識のズレが攻守のバランスを崩し、4失点目を与えた時点で試合は決まった。

 トルステン・フィンク監督は「何度も接戦で負けるより一度大きく負けた方がいい」という意味のドイツの諺を引用し、切り替えを強調した。だが2週間後のFC東京戦までに、広島によって露見させられた守備の問題点を修正できるのか。指揮官の手腕が問われる。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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