【ノースロンドン・ダービー展望】ピッチ上で繰り広げられる至高の「戦術合戦」に注目!

2019年09月01日 内藤秀明

今シーズンは「びっくり箱」のような魅力がある。

出場停止/アーセナル=なし トッテナム=なし
故障者/アーセナル=ベジェリン(DF)、ティアニー(DF) トッテナム=フォイ(DF)、セセニョン(DF)、ウォーカー=ピータース(DF)、ヌドンベレ(MF)、ダイアー(DF)

 今シーズンのノースロンドン・ダービーはとにかく展望が難しい。蓋を開けてみなければわからない、いわば「びっくり箱」的な魅力がある。
 
 予想が難しいのはまず、各チームの先発メンバーやシステム。両軍ともに対戦相手に応じて戦い方を変える、戦術的柔軟性の高いチームだからだ。
 
 トッテナムはカウンター型のチームという点では原則変わらないものの、システムは4-4-2、4-2-3-1、4-3-1-2などを使い分ける。ヤン・ヴェルトンゲンがコンディション的に起用可能であれば、3バックという選択肢もあるだろう。
 
 ファン・フォイ、カイル・ウォーカー=ピータース、タンギ・ヌドンベレ、ライアン・セセニョンなどレギュラークラスに負傷者を数多く抱えており――とくに右SBは緊急事態――、やり繰りが難しい部分があるとはいえ、今シーズンはドリブラーのエリク・ラメラが好調を維持しており、技巧派デレ・アリなど怪我から戻ってきている選手もいる。ハリー・ケインやソン・フンミンなどのスコアラーとの組み合わせに注目が集まる。
 
 一方のアーセナルも、エクトル・ベジェリン、キーラン・ティアニー、ロブ・ホールディングスが負傷欠場中なうえ、昨シーズンまで主力だったロラン・コシエルニーとナチョ・モンレアルが退団した最終ラインはやや手薄だ。
 
 とはいえテクニシャンのダニ・セバジョス、スピードスターのニコラ・ぺぺなど、世界トップレベルのオフェンシブなタレントをチームに加え、アカデミーからは推進力が魅力のジョー・ウィロックが台頭。中盤から前線は興味深いタレントが揃っている。
 
 なによりメスト・エジルが帰ってくる。稀代のプレーメーカーは暴漢さわぎや病欠などもあり今シーズンはここまで出場機会がないものの、間に合えば大きなプラス。「カメレオン型のチームを好む」と自らの志向性を語るウナイ・エメリ監督の言葉通り、相手や状況に応じてスタイルを変える柔軟性の高いサッカーにさらに幅がでる。システムだけでなく、カウンターやポゼッションなど、基本戦術すら変えることができる最強のスカッドが整いつつあるのだ。
 
 だからこそ、両チームのスタメン発表から試合開始までの1時間は、最も楽しみな時間帯の一つになる。どのような選手を使い、どう戦いに臨むのかを予想し、友人たちとSNSなどを通じて議論する時間は至高だ。
 
 もちろん、試合が始まってからも目が離せない。そもそもどちらが主導権を握るか検討がつかないし、試合のなかで相手の出方や状況に応じて両チームが戦い方を変化させていくはずだ。ピッチ上で繰り広げられるのは、いわば「戦術合戦」。それでいてダービーらしい球際の激しさやスピード感も失われないだろう。
 
 戦力も均衡している。ここ数年で最高のノースロンドン・ダービーになるはずだ。
 
【一口メモ|ノースロンドン・ダービーとは】
 ともに最大のライバルとして認識し、火花を散らすイングランドでもっとも熱いダービーのひとつ。1913年にアーセナルがロンドンの南側から北側へと本拠地を移したことをきかっけに対抗心が熟成されていった。記憶に残るダービーは、アーセナルが敵地でリーグ優勝を決めた71年と04年の戴冠試合や、計9ゴールと撃ち合った04年11月の激闘など。
 
 
文●内藤秀明(プレミアパブ)
text by Hideaki NAITO
 

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