久保建英のレアル移籍が契機に!? 初優勝へ向けFC東京が手にした健全なるバランス

2019年08月05日 後藤勝

久保移籍後に2連敗を喫したが…

21節のC大阪戦で3-0の快勝を収めたFC東京。ここ5試合で4勝1敗と、ペースを上げている。(C) SOCCER DIGEST

[J1リーグ21節]FC東京3-0C大阪/8月3日(土)/味スタ
 
 失速した昨シーズンの反省から、攻撃陣を大幅に補強して2019シーズンに臨んだFC東京。その中から新戦力よりも早く台頭したのは、レンタルバックの久保建英だった。レアル・マドリーへの移籍で欧州に旅立つまでの13試合で4ゴール・3アシストを記録し、ディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑に次ぐ第三の矢として文句なしの活躍。彼の存在がFC東京を首位へと押し上げていたことは間違いない。

 
 その彼がいなくなったあと、ヴィッセル神戸とベガルタ仙台に連敗を喫した。『久保のいなくなった東京は終わり』と評されても致し方ないところだったが、そのままでは終わらなかった。
 
 現在のFC東京は久保がいなくなった傷口をきれいに縫合しているかのように映る。"久保後"にサイドハーフを埋める第一候補だったナ・サンホが欠場した20節・清水エスパルス戦では、久保が先発で出ている間、準レギュラーとして日々牙を研いてきた大森晃太郎が、最近のキレのよさを見せつけるかのようなゴールで勝利をもたらした。
 
 21節のセレッソ大阪戦では、その大森に替わり途中から出場した三田啓貴がフリーキックで森重真人のゴールをアシスト。終盤はナ・サンホも登場して敵陣に押し込み、3人の男たちが揃ってチームに貢献した。加えて言えば、太田宏介がいなくなった左サイドバックではオ・ジェソクが完璧な守備を披露、軽いけがで欠場した小川諒也の不在を感じさせない出色の出来だった。センターバックではチャン・ヒョンスの後継的地位にある渡辺剛が日々成長して森重のパートナーを着実に務めている。
 
 渡辺を育て、大森をリフレッシュさせ、ナ・サンホをフィットさせ、三田を獲得。強化の手を緩めなかったクラブの姿勢と、長谷川健太監督以下コーチングスタッフの力が相まって、ピンチに追い込まれそうな状況にあったFC東京を首位戦線に押し戻したのだ。
 
 特に左利きで創造性豊か、キッカーとして期待でき、得点力もある三田の加入は、久保の離脱を補って余りある効果をもたらしている。そのうえ、アカデミー出身で連係にも問題がない三田にはクラブ愛と熱い心があり、オ・ジェソクには長谷川監督を敬う気持ちと誠実さがある。能力以外の面も考慮した補強が結果につながっている。ある意味で"久保頼み"だったシーズン前半戦よりも健全なバランスを構築しつつあるFC東京に、もはや死角は感じられない。
 
 災い転じて福となす。久保の欧州行きを契機に、初のリーグタイトルを狙うFC東京は次の段階へと一歩を踏み出した。
 
取材・文●後藤 勝(フリーライター)

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