ベースは2000年初頭のジュビロ磐田… BB秋田U-18を率いる熊林親吾は初の全国舞台へどう挑むのか?

2019年07月18日 竹内松裕

「映像をチェックして、選手たちに最低限の情報だけ与えます

7月13日、秋田県リーグ1部の試合で秋田西高校と対戦したBB秋田U-18。試合前、ハイタッチとともに選手たちに声をかけてピッチに送り出す熊林監督。写真:竹内松裕

2019年5月下旬から6月上旬にかけて、日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会の東北予選が行なわれた。6チームによる総当たりの予選で、ブラウブリッツ秋田(BB秋田)U-18は2勝3分の成績を収めて3位に食い込み、7月下旬から始まる全国大会に秋田県代表として初めて駒を進めた。
 
 BB秋田U-18を率いて4年目のシーズンを送る熊林親吾は、この成果について「どちらかというとホッとしました。プレーするのは自分ではなく選手たちなので、選手を勝たせてあげたい、全国大会の舞台に立たせてあげたいという思いでやってきた。結果としてそれが実現できました」と振り返る。
 
 秋田商業高から2000年にジュビロ磐田に加わり、湘南ベルマーレや横浜F・マリノス、ベガルタ仙台、ザスパクサツ群馬などで活躍。2013年から3年間生まれ故郷のBB秋田でプレーし、2015年に現役生活を終えた。JFL時代を含め400を越える出場試合数を誇る熊林は、次のステップとして指導者の道を選び、2016年にBB秋田U-18の監督に就任した。
 
 熊林のサッカー人生の根幹には多くの指導者との出会いと、Jリーガーとしての豊富な試合経験がある。その中でも、プロ1年目に加入したジュビロ磐田は特別だったと述懐する。「選手が主体的になって自分たちでサッカーを作り上げる雰囲気がありました。今はそれがベースになっているとも言えます」
 
 だが、決して自分の理想を選手たちに押し付けているわけではないともいう。筆者が「理想のチームに近づいているか」と聞くと、「自分の理想とするサッカーを教えているわけではない。どうすれば上に引っ張られるかということを考えて、選手の良さを引き出そうとしています」と明言した。
 
 指導で大切にするのは「プレーが意図的であるかどうか」。そのことになると、熊林の言葉が熱を帯びた。「自分たちで相手のゴールまでしっかりと運んでいって、ゴールを目指す。それがまぐれであれば、絶対に上達ではない。この考えは選手時代から変わりません」
 
 BB秋田U-18は、確かなテクニックと簡単に当たり負けしないフィジカルでボールを保持し、相手の動きを見つつ、空いているスペースを狙っていくプレーが光る。狭いスペースの連係に加え、長短を織り交ぜたパスで相手を崩そうとする多彩さに加え、粘り強い守備も持ち味だ。
 
 熊林は試合に臨むうえで、相手の分析はほとんどしないという。「映像をチェックして、選手たちに最低限の情報だけ与えます。でも『相手がこうくるから絶対にこうしよう』というやり方はしないですね。なぜならそんな練習をしてもうまくならないし、それはプロになってからでいい。むしろ柔軟にいろんな戦い方をやって、上に行った時に対応できる力を養ったほうがいいです」
 
 また、選手にあまり情報を与えないのは「相手を見て、試合の中でみんなが話し合って試合を進めていくためでもある」と続ける。BB秋田U-18は日頃の練習で、ピッチの中で考える練習に取り組む。この能力を伸ばすことは熊林自身が選手時代から心がけてきたことでもあり、「それだけは選手に伝えたい」と力を込めた。
 

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