【甲府】堅守復活で「らしい勝ち方」。攻撃的サッカーの追求も物差しは“内容”より“勝点”だ

2019年07月18日 サッカーダイジェストWeb編集部

6試合ぶりの無失点でウノゼロ勝利。原点回帰で結果を手にする

甲府は22試合を消化してプレーオフ圏内の6位。ここからさらに上位へ食い込めるか。写真:徳原隆元

 J2後半戦の幕開けとなった22節の愛媛戦。6試合ぶりの無失点で手にしたウノゼロの勝利は、連敗を2で止めるだけでなく甲府が勝点を積み上げていく上で、不可欠な堅守の重要性を再認識させる1勝だった。

 
 ピーター・ウタカやドゥドゥら外国人FWを前線に擁し、ここまでリーグ2位の34得点。強力な個が輝きを放つ攻撃面に目がいきがちだが、開幕から8戦無敗など勝点を積み上げてきた土台には組織としての安定した守備があった。開幕からの10試合は半分の5試合が無失点。それが11~21節には2試合に減少し、それとともに勝点を積み上げるペースも減速した。攻撃は2節の山口戦や19節の琉球戦で5ゴールの固め打ちをするなど爆発力があっても半分以上の13試合は1点以下と安定性に欠け、よりどころとするには不安が拭えない。
 
 順位表を見ても甲府より上の5チームの失点数は京都が最大の20で残り4チームは10点台。伊藤彰監督もシーズン序盤に上位進出のポイントとして「失点が少ないこと」を挙げていた。ただ、シーズンが進むにつれてチームはボールをより保持した攻撃的な戦いへの進化に手応えを掴んでいた。それがベースの守備意識を希薄にするという皮肉な状況を生んでいたように見える。
 
 奇しくも21節の柏戦までの5試合は先制点を取られ、1勝1分け3敗と結果が出ずに苦しみの真っ只中にあった。後半戦の戦いを前に伊藤彰監督は「クリーンシート」と「先制点」を鍵に挙げ、愛媛戦に向けては練習でも守備にフォーカス。「原点回帰」を図ってチームに求められる結果を手にした。
 
 どんなにいいサッカーをしても結果が出なければ、理想に溺れるだけで終わってしまう。昨シーズンまで10年連続で主将を務めていた山本英臣は、2-4で敗れた柏戦後に「ベンチとピッチ内では感覚が違うから」と前置きをした上でこう話していた。「自分たちのサッカーどうこうよりも勝ちにいかないといけない。自分たちのやり方で戦い、負けて『次につながる』と言ってもつながらない。結果にこだわらないといけない」
 
 
 J1昇格という目標を掲げている以上、「内容」という見る人間によって評価が分かれる指標ではなく、「勝点」という数字を物差しとする――。甲府17年目。3度のJ1昇格とJ2降格を知っている「クラブの象徴」の言葉には重みがあった。
 
 目の前の試合は結果にこだわりながら、よりボールを保持する攻撃的なサッカーへの成長を続ける。簡単ではないミッションだが、愛媛戦の戦いは間違いなくこれからの指針となってくれるはずだ。「甲府らしい勝ち方」。指揮官も試合後にはこう評価した。
 
 現実的な戦いで勝利を積み上げ、理想を追求する時間をつくる――。昨季序盤に結果が出ずに監督交代という決断をせざるを得なかった甲府に必要だったサイクルは、今確実に動き出しているのではないだろうか。
 
構成●サッカーダイジェストWeb編集部
 
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