首位堅持のFC東京、大爆発の攻撃陣の陰で…守護神・林彰洋の圧巻の勝負強さを象徴したシーン

2019年07月10日 後藤勝

3-1とリードしてからの逃げ切りを成功させたのは…

逃げ切りに大きく貢献した林。ファン・ウィジョの決定機を阻止した場面は勝負の分かれ目に。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 FC東京がまたも複数得点で大勝し、首位を堅持した。2試合で7ゴールと大爆発中の攻撃陣に話題が集中するのは当然だが、攻撃的なシステムを採る相手に対し、集中したプレーで失点を少なく抑えている守備陣を忘れてはいけない。
 
 試合開始間もない5分に小川諒也がピッチに足をとられて転ぶというミスから先制点を許しこそしたものの、その後は両ウイングバックが高く張り出す3-5-2で圧力をかけてくるガンバ大阪に追加点を許さず、逆転勝利を呼び込んだ。

 
 分岐点となったのは、3-1としたあとの、66分のプレーだ。後半開始から遠藤保仁を投入して支配力を高めていたG大阪は、東京が形成するブロックの前でボールを回す。そして崩す頃合いと見た頃に、左サイドから矢島慎也がクロス。これをアデミウソンが胸トラップしたところ、森重真人と小川諒也がプレッシャーに行くと、事故的にボールがこぼれてさらに髙萩洋次郎に当たり、偶然ガラ空きになりかけていたゴール左隅へと転がってしまった。
 
 ここにポジションをとっていたのはファン・ウィジョ。1点もののシーンだったが、林彰洋が身を翻して急行し、右手を出してファン・ウィジョのヘディングを弾き、蹴り出してCKに逃れた。
 
 林がこう振り返った。
「髙萩選手がクリアしようとしたボールがあの場所に行き、ファン・ウィジョ選手がフリーだった。もうコースを消しさえできればいいという状況だったので、一番打ち頃だろうという位置に行ったら(手に)当てることができた、という感じだった。偶然もありますね」
 
 今シーズンの林はDF陣と連係しながら守備組織全体で守るやり方を洗練させている。ところがこの局面では、もはやGKが個人で止めるしかない。組織的なスタイルを志向する林だが、GK単体でも圧巻の勝負強さを誇ることを証明した場面だった。
 
 
その後、宮本恒靖監督は食野亮太郎を投入して攻勢に出るが、「間に入ってくる選手だったので、クサビに対して強く行ければそこまで問題ないなとは思っていました」と、冷静に観察。間を通そうとするパスを奪いカウンターに転ずるイメージで守備陣をオーガナイズし、結局、後半45分間をシュート3本に抑えての逃げ切りに成功した。
 
 3-5-2に布陣を変更してから負けなしだったG大阪は、この試合でも決して内容が悪かったわけではない。その青黒軍団を粉砕したのは青赤攻撃陣の功績だが、ゲームの流れを相手に渡さなかったのは、守備陣がよく働き、耐え抜いたおかげだろう。攻守が噛み合い、東京は首位のまま、優勝の行方を左右するだろう多摩川クラシコを迎える。
 
取材・文●後藤 勝(フリーライター)
 

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