「久保建英の戦いはすでに始まっている」スペイン人記者が語る、成功の条件とレアルBの現実

2019年07月04日 トマス・マルティネス

タケフサ・クボは他のアジア人選手より、大きなアドバンテージがある。

レアル・マドリーへの移籍が実現した久保。戦いはすでに始まっている。 写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 久保建英はつねに欧州、とりわけスペインのビッグクラブにとって注目の存在だった。

 当時15歳で出場した2017年のU-20ワールドカップでも鮮烈なインパクトを残し、13歳でバルセロナを退団後も彼の成長にブレーキがかかっていないことを実証した。

 トレードマークとも言える左足に吸い付くようなドリブルに加え、厳しくマークされても積極的にボールを要求するパーソナリティの強さも申し分なく、同大会では年長者が大半を占めるチームを相手に堂々たるプレーを見せ続けた。

 多彩なフェイント、ドリブルのスピードとその緩急の使い分けは、2001年生まれ世代の中では世界トップクラスと言っていい。彼のプレースタイルにもっともマッチする
ポジションは右サイドだろうが、ユーティリティ性も持ち合わせており、トップ下あるいはFWでも機能する。

 FC東京でも格の違いを見せ続け、特に味方のサポートが十分に得られない状況でも、独力でフィニッシュまで持ち込める局面打開力は出色。さらに、今季のJリーグで4ゴールを挙げている(出場13試合)ように高い得点力も備える。よりレベルの高いステージでもコンスタントに得点を決められるかどうかが、欧州での成否を左右する重要なポイントとなるだろう。
 
 スペイン語を話し、スペインのフットボールカルチャーをすでに体験している点は、久保にとって大きなアドバンテージである。欧州のクラブに移籍したアジア人選手の多くが環境への適応に苦労するが、久保に関しては心配いらないだろう。

 もっとも、カスティージャ(久保が1年目に在籍するレアルBの名称)が所属する2部B(実質3部)はとてもタフなリーグだ。肉弾戦と局地戦に持ち込むのがカスティージャと対戦するチームの常套手段であり、久保はその独特のスタイルに最初はかなり戸惑うはずだ。

 さらに、誰もが苦しむこの壁を乗り越えても、チーム内での競争を勝ち抜かないかぎり未来は開けない。現在マドリーには同世代だけでも、ヴィニシウス・ジュニオール、マルティン・ウーデゴー、ブラヒム・ディアス、ロドリゴといった才能溢れるタレントがひしめく。マドリーのトップチームで活躍するためには、こうしたライバルたちに打ち勝たなければならない。

 入団を決めたその日から、すでに熾烈な生存競争が始まっているのだ。

◆著者プロフィール◆
トマス・マルティネス
スペインの人気海外サッカー専門サイト『marcadorint』に籍を置く新進気鋭の若手記者。とりわけ若手選手の分析を得意にしており、その知識の範囲は世界中の選手を網羅する。『BeIN(サッカー専門チャンネル)』の海外サッカー中継でコメンテイターも務める。1994年生まれ。

※『サッカーダイジェスト――特集・久保建英、新天地での未来予測』7月11日号(6月27日発売)より転載。

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