J2優勝候補の柏がまさかの大不振…プレーオフ圏外に沈むクラブが選んだ反転攻勢の策は?

2019年06月22日 鈴木潤

4バックシステムと江坂&瀬川の2トップの動きには工夫が見えた

連動性が高い4バックの熟成が、柏が浮上するカギになるかもしれない。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 18節を終えて7勝7分4敗、プレーオフ圏外の7位と、柏レイソルの調子が一向に上がらない。不振の原因のひとつは、FC岐阜、栃木SCに次いでリーグワースト3位の総得点15という得点力不足にあることは明白だが、フィニッシュやラストパスの精度に難を抱えるのと同時に、チームとしてどう攻撃を仕掛け、点を取るのか、その形がまるで見えてこないのである。
 
 チームトップの6得点を記録するオルンガがケニア代表に招集された。直後の17節・愛媛FC戦では、ネルシーニョ監督は3-5-2のシステムを用いてクリスティアーノとガブリエルのブラジル人2トップで状況打破を試みたものの、2度追いやプレスバックのない外国籍選手の2トップでは前線からの守備がまったくハマらず。空いたスペースを愛媛にいいように使われ、さらに染谷悠太の出場停止、古賀太陽のU-22日本代表招集というレギュラーの守備陣の不在も相まって、攻撃が機能する以前に守備が崩壊。愛媛戦では今季最多の3失点を許した。
 
 そこで続く18節のアビスパ福岡戦では「攻撃に人数をかける、そしてより攻撃に安定感をもたらす」(ネルシーニョ監督)という狙いを持って、9節の栃木戦以来9試合ぶりに4バックシステムを採用した。ところが、これまでしばらく3バックで戦ってきた影響か、4バックの守備の仕方にチーム全体がアジャストできず、17分にはたった2本のパスで城後寿に背後を取られ、福岡に先制を許した。愛媛戦同様、用いた策が裏目に出てしまったのだ。
 
 ただし、攻撃に関しては、劇的に変化しないまでも、これまでの単調な攻撃とは違った形が見えたのも確かだ。
 
「4バックはポジションチェンジが起こるフォーメーション。3バックと比べて4バックはサイドバックが上がってサイドハーフが落ちたり、クリスと俺が変わったりということが起きる」(江坂任)
 
 福岡戦の2トップは江坂と瀬川祐輔。今季初めて2トップを組んだ彼らは互いの動きを意識しながら、瞬間的にポジションを下げるなど味方からのパスを何度も引き出し、そのうえで周囲の選手との連係で中央を崩そうという狙いが窺えた。

 6試合ぶりにスタメンに復帰した大谷秀和は、4バックシステム、及び江坂と瀬川の日本人2トップの効果を語る。
 
「ここまでは長いボールが多かったから、それは極力減らそうと思っていた。背後を狙いながらも、なるべくボールを保持して前進していこうと任とも話していたので、これまでの試合よりは短いパスや、間に入るパスはあったと思う」
 
 オルンガとクリスティアーノの個の能力は確かに強烈だが、前線に張り付いているだけの彼らにロングボールを蹴り込むだけでは対戦相手は守りやすく、ミスなどの偶発的な要素が起こらない限り得点は生まれない。一方、福岡戦で用いた4バックシステムと江坂&瀬川の日本人2トップの動きには、様々な箇所で工夫が垣間見えた。
 
 とはいえ、福岡戦は1-1の引き分けに終わり、内容的にも満足のいく試合ではなかった。光明が見えたわけでも、浮上のきっかけを掴んだわけでもない。むしろ、まだまだ苦しい戦いを強いられるのは間違いないだろう。それでも、まるで打開策を見出せなかった3バックよりは、4バックを成熟させていく方が、柏が立ち直る可能性はあるのではないだろうか。
 
 次節以降のネルシーニョ監督の選択に注目が集まる。
 
取材・文●鈴木潤(フリージャーナリスト)
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