「夢見ていた景色」大学を経由して“帰還”した西澤健太が再び清水の一員になれた日

2019年06月16日 古沢侑大(サッカーダイジェスト編集部)

「課題も見える。ただ、彼には何度もトライしてほしい」(篠田監督)

リーグ戦初ゴールを挙げた西澤。写真:金子拓弥(サッカーダイジェト写真部)

[J1リーグ15節]清水3-2横浜/6月15日(土)/アイスタ

「夢見ていた景色」
 
 そう感慨深げに語ったのは決勝弾を挙げた西澤健太だ。
 
 清水は先制を許す苦しい展開。CKから松原后のゴールで一度は追いつくも、81分に仲川輝人に勝ち越し点を決められ、敗色濃厚に見えた。だが、この日はひと味違った。89分に右サイドの裏に抜け出した北川航也のアシストからドウグラスの強烈な左足のシュートで同点。さらに90+1分には相手の不用意な縦パスをインターセプトしたエウシーニョのパスから西澤が執念の逆転ゴールを突き刺した。終了間際の2ゴールで劇的な勝利を手繰り寄せたのだ。

「新加入した今年の序盤は(試合に)絡むことができずに悔しい試合もありました。ゴールを決めてチームを勝利に導いたのは嬉しいです」

 こう語る決勝弾を挙げた西澤は筑波大からの新加入選手だが、ジュニアユース時代からユースまでの6年間を清水で過ごした"出戻り選手"でもある。ユース時代の同期は現在、共にプレーする北川。西澤がトップチームに昇格できなかった一方で、北川はトップ昇格を果たし、清水のエースとしてチームを引っ張っている。北川に対して引け目を感じる部分もあったかもしれない。とはいえ、この日ピッチで一番輝いたのは西澤で異論はないだろう。
 
 ゴールシーンを振り返ると「オレンジのユニホームが揺れていて、歓声も聞こえた」という。これこそがまさにアカデミー育ちの「夢見ていた景色」ではないだろうか。筑波大を経由したものの、ジュニアユース時代から流れ始めた"オレンジの血"の流れは4年間止まっていなかった。

 さらに今日の勝利の要因を語る。
 
「勝ち越された時もチームは下を向きませんでしたし、サポーターの皆さんもそうです。諦めない姿勢が最後の僕の得点につながったし、皆さんの思いを背負ったシュートだった」
 
 篠田善之体制下で徐々に出場機会を増やしている西澤は、清水の浮上のキーマンになっていきそうだ。とはいえ「ここで切らさずに次の試合」でも活躍が求められる。篠田監督の言葉を借りれば「今日は皆で喜んで、明日からまた次のゲームに向けて」準備が必要だろう。
 
 最後に西澤に対して期待を寄せるからこその、篠田監督のコメントを紹介したい。
 
「2、3回決定機があったので、決め切れるクオリティを出すという部分では、課題も見える。ただ、彼には何度もトライしてほしい」
 
 その言葉通り、リーグ戦でチャンスを与えられながら決定機を外すシーンも多かった。だがこの試合で西澤がようやく清水に勝点3をもたらした。"オレンジの血"が流れる西澤と北川のコンビで得点を奪い、チームを勝利へ――。そんなシーンで清水をさらなる上位へと導いていってほしい。
 
取材・文●古沢侑大(サッカーダイジェスト編集部)

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