東京五輪を狙う京都サンガの刺客。U-17代表の主将も務めた福岡慎平が急成長中

2019年06月07日 雨堤俊祐

キーマン不在を感じさせないパフォーマンスを披露

アンカーとして充実の働きを見せた福岡。東京五輪への野望も隠さなかった。写真:滝川敏之

 好調を維持する京都サンガF.C.は、敵地でのJ2リーグ16節・東京ヴェルディ戦でひとつのテーマに直面した。今季から10番を背負う庄司悦大が15節・山口戦で退場。中盤の要を欠く中でチーム力が問われることになった。
 
 試合前、中田一三監督は「あまり選択肢は多くない」と漏らしている。庄司はアンカーとして開幕からフルタイム出場中で、リーグ戦では他の選手を試せていない。控え組中心の練習試合で同ポジションを務めた望月嶺臣は1週間前の試合で出色の出来を見せながら、その後に軽症で戦線離脱。そうしたなか、指揮官が出した答えは福岡慎平のアンカー起用だった。今季は右SBからスタートして、最近はセンターハーフに定着しているが、京都U-18ではアンカーを主戦場としていた経験を持つ選手だ。
 
「庄司くんと同じことはできないけれど、自分の良さを出したい」(福岡)という言葉を、プロ1年目の18歳は見事に体現する。中盤の底でシンプルにパスをさばきながら攻撃の組み立てにかかわり、状況によっては広範囲に動いて崩しの局面にも顔を出した。

 追加点となった18分のゴールシーンが、まさにそれだ。センターサークルで福岡からの横パスを受けたDF安藤淳が前線へフィードを送って起点が生まれると、福岡は敵陣深くへと移動していく。左サイドでタメを作る仙頭啓矢からのパスを受けて「ファーストタッチを意識して、ひざ下を強く振れた」という見事なシュートを蹴りこんでみせた。「実は前日の練習で、ほぼ同じ位置でパスを受けた時にシュートを打たなかったんです。後から『打てばよかった』という後悔があって、そうしたら試合当日にあの場面が来た。もらった瞬間、打つことしか考えていませんでした」という背景もあった、うれしい今季初得点だった。

 また、守備でも貢献を見せている。昨年までFC東京U-18を指揮し、高校生の頃の福岡も知っている佐藤一樹コーチは「相手がうちのアンカーへのケアが充分でなかったとはいえ、自分のプレーを表現できたのは自信になるだろう」と評価した。
 
 久保建英らとともに戦った2017年のU-17日本代表ではキャプテンを務めるなど、優れた人間性とコミュニケーション能力を持つ。一方で、決定機に顔を出しながら決められない場面が続いたなかでの今季初ゴールについて問いかけると「ようやくっすよ、マジで(笑)」と砕けた一面も時折のぞかせる。今季はU-20ワールドカップ出場を目標にアピールを続けていたが、残念ながら本大会メンバーに入ることはできなかった。悔しさはあるだろう。それでもメンバー発表の翌日には、アカデミーの1学年先輩であるGK若原智哉の選出を喜び、「僕は次の目標ですね。東京五輪、そこに向かってここ(京都)で頑張ります」と話している。
 
 今季、与えられた背番号は31。過去には、福岡と同じ京都のアカデミー出身の宮吉拓実や久保裕也らが若かりし頃に付けていた出世番号だ。クラブやサポーターからの期待を受けながら、さらなる成長を果たした先にはどんな未来が待っているのだろうか。

取材・文●雨堤俊祐(サッカーライター)
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