【高校選手権/代表校レポート】青森山田|「もっとシビアに、自覚を持って」真の強豪になる

2014年10月26日 安藤隆人

プレミアリーグでのひとつの敗戦がチームを変えた。

青森山田
所在地:青森県青森市青葉3-13-40
創 立:1918年
創 部:1970年
主なOB:柴崎岳(鹿島)、橋本和(柏)、櫛引政敏(清水)、伊東俊(山形)など。
 (C) SOCCER DIGEST

 チームはより逞しくなった。青森県大会決勝で、青森山田はその圧倒的な強さを見せつけ、18連覇という偉業を成し遂げた。
 
 その両肩には大きなプレッシャーがかかっていた。県内では公式戦280戦以上無敗で、常に「勝って当たり前」というなかで戦ってきた。
 
「さすがにね、勝って当たり前の雰囲気はしんどいよ」。試合後、安堵の表情を浮かべながら、黒田剛監督がそう語ると、「やっぱりプレッシャーはあります。特に選手権は独特なんで」とナンバー10を背負う、FW丹代藍人も苦しみを口にした。
 
 だが、その中でも盤石の戦いを見せるのだから、この強さはまぎれも無く本物だ。特に今年のチームは、春先と比べて精神的な成長が顕著に見て取れた。
 
 昨年のチームから主軸が多く抜けたが、各ポジションに核となる選手は残った。しかし、精神的なタフさが足りず、プレミアリーグEASTの前期は勝負どころでの詰めの甘さが目立った。リードを奪っても、終盤で追いつかれたり逆転されたり、勝ち切れず下位に沈んだ。
 
「真の強豪はどんな時でも必ず勝ち切る。勝ち切れないのは、自分たちを理解しておらず、『やれているつもり』でプレーしているから」と黒田監督は、チームを一度突き放した。プレミアEASTの7節・東京Vユース戦。試合前や試合中の指示を一切せず、自分たちでやらせた。結果、1-0でリードするも、終盤に2点を奪われての逆転負け。
 
「この負けで自分たちがいかに甘かったかを、嫌というほど思い知らされた。このままじゃいけない。自分たちのやりたいパスをつなぐサッカーで勝つためには、球際で絶対負けないとか、奪われたら何が何でも奪い返すという強い気持ちが必要」と、小笠原を中心にチームはミーティングを重ねながら、練習でもより真剣に、シビアに打ち込んだ。
 
 その後のインターハイではベスト4入りし、プレミアEASTでも後期は4勝2分けと負けなし。尻上がりに調子を上げたチームは、この決勝でもGK廣末陸、FW松木駿之介ら主軸を怪我で欠くなか、攻守両面で盤石な強さを見せつけた。
 
 プレッシャーからか立ち上がりこそ硬さが目立ったものの、相手にボールを奪われても素早くリカバー。すぐさまボールを奪い返して、2次、3次攻撃を仕掛けて、容赦なく八戸学院野辺地西ゴールに迫り、6点を奪ってみせた。
 
「自分たちがやりたいことをやるには、まずその前に当たり前のことを当たり前にやれるようにする。この重要性が分かった。まだまだな部分もあるので、これからもっとシビアに、もっと自覚を持ってやりたい」(小笠原)
 
 もう勝負どころで弱さを見せる自分たちではない。逞しく生まれ変わったチームは、現状に満足せず、よりどん欲に、より向上心を持って、選手権の舞台に挑む気概にあふれている。

【高校選手権photo】青森県大会|青森山田 対 八戸学院野辺地西
 
■青森県予選 決勝短評
青森山田 6-0 八戸学院野辺地西
得点者/青=山下2、丹代2、野口、木戸
 
 立ち上がりこそ、FW阿部稜を軸にした八戸学院野辺地西のカウンターと粘り強い守備にリズムを乱された青森山田だったが、23分に左サイドを破ったFW木戸隆生の折り返しをMF野口雄輝が決めると、43分に木戸が、50分にはMF山下優人がPKを決めて3-0。これで勝負は決し、足が止まった八戸学院野辺地西に猛攻を仕掛けた青森山田がさらに3点を奪い、結局6-0の勝利を手にして18年連続20回目の選手権出場を果たした。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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