「スウェット」にこだわったハンガリーの伝説守護神がついに引退。一体なぜ、ハーフパンツを履かなかったのか?

2019年05月24日 サッカーダイジェストWeb編集部

「ファッションモデルじゃない」と履き続けた

泥だらけのスウェットパンツがトレードマークだったキラーイ。トップリーグで長く活躍した名守護神がキャリアを締める決断を下した。 (C) Getty Images

 大ベテランの守護神がついに"スウェットパンツ"を壁にかけた。

 現地時間5月22日、元ハンガリー代表GKのガボール・キラーイが、現役から退くことを発表。自身の26年に及ぶプロキャリアに終止符を打った。

 現在43歳のキラーイは、1993年にハンガリー1部のソンバトヘイ・ハラダーシュでプロデビュー。そこでの活躍が目に留まって1997年の9月にヘルタ・ベルリンに移籍すると、翌年には、当時オリバー・カーンなどの名手たちがプレーしていたブンデスリーガで、最優秀GKに選出された。

 ヘルタ・ベルリンで7シーズンに渡りプレーしたキラーイは、2004年の夏にプレミアリーグのクリスタル・パレスに移籍。その後、ウェストハム、アストン・ビラ、バーンリー、フルアムとイングランドのクラブを渡り歩き、2009年6月から1860ミュンヘンのゴールを守った後、2015年7月に古巣ハラダーシュに復帰していた。

 ハンガリー代表史上最多となる108キャップを刻んだキラーイの名を世界的に知らしめたのは、そのスタイルにあった。「昔は冬の凍った芝生の上とかでプレーしなきゃいけなかったから、地面に落ちた時に足を痛めないようにしたかった」という理由から、ロング丈のスウェットパンツを履き続けたのだ。

 グレーのスウェットパンツが話題に挙がり、「不格好だ」、「年老いてみえる」という意見も寄せられたが、これにキラーイは、「僕はファッションモデルじゃないから別にいいんだ(笑)。要するに見た目を気にしなければなんの問題もない」と返し、意に介すことなく第一線で活躍し続けた。
 
 フランスで開催されたEURO2016では、40歳74日でピッチに立ち、2000年にドイツのローター・マテウスが残した大会史上最年長出場記録(39歳91日)を更新した守護神は、22日に自身のFacebookにトレードマークのスウェットパンツをロッカーのフックにつるし、優しくなでてから、その場を離れるというユニークな引退動画を投稿。さらにハンガリーのポータルニュースサイト『ORIGO』では、次のように答えている。

「私にあらゆることを教えてくれ、人としても成長させてくれたサッカーに感謝している。私は常に誇りをもって準備をし、最大限の努力を重ねてきた。そして何よりも謙虚にあらゆる仕事に取り組めたと思っている。家族と友人には『支えてくれてありがとう』と言いたい。彼らがいなければ、26年もの素晴らしい旅は歩めなかった」

 キラーイのようなユニークな存在が現役を退くことには、いささかの寂しさを感じえないが、ハンガリーという小国に生まれながら世界にその名を知らしめた彼の功績は、この先も語り継がれるはずだ。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事