Jリーグ王者・川崎はなぜACLで勝てないのか? 今季は例年よりもチームの仕上げを急いだが…

2019年05月22日 江藤高志

想定外の怪我人の続出と若手の急成長。その結果もたらされたのは…

リーグ戦では9節から3戦連発と得点力を上げてきた小林だったが、ACLでは勝負どころで勝利に導くゴールを奪えなかった。(C) Getty Images

[ACLグループステージ最終戦]シドニーFC0-4川崎/5月22日/ネットストラタ・ジュビリー・スタジアム
 
 グループステージ最終戦の、シドニーFC戦を前にした齋藤学の言葉が現実を突きつけていた。
「ここ2年、アウェーで未勝利というのが、そもそもなかなか勝てていないというのが問題です。アウェーでもホームでも」

 
 2017年から3年連続ACLに出場してきた川崎は、ACLに限れば2017年の準々決勝・浦和戦で敗退して以降、長期の低迷を続けている。2018年は、グループステージ6試合で3分け3敗と未勝利のまま敗退。今季は2勝したが、そのうちの1勝はグループステージ敗退が決まったシドニーFCとの今回の対戦で、純粋な"1勝"と言うにはおこがましいものだった。
 
 直視すべきは上海上港、蔚山現代との4試合で2分け2敗、勝点2にとどまったその勝負弱さであろう。
 
 上海、蔚山でのアウェーマッチは、ともに0−0で進んだ試合終盤に失点。最低限の結果と考えていた勝点1を取りこぼしてしまった。それではこの2試合が実力通りの敗戦かというとそうでもないところが難しいところで、上海については、スライディングした身体を支える手にたまたまボールが当たりPKの判定に。その不運を呪うしかないが、逆にいうと無得点のまま試合終盤まで進めてしまったことを反省するしかなかった。
 
 アウェーの蔚山戦では、先発したレアンドロ・ダミアンを生かすべく長いボールを織り交ぜた試合運びを見せたが、チャンスを得点に結び付けられず。引き分けを視野に入れた後半アディショナルタイムに失点し、敗戦となった。
 
 例年、川崎はシーズン序盤に結果が出ず苦しむ傾向があるが、特に今季はダミアンという選手を加えたことによるスタイルの変化を消化しきれず、それがチグハグな試合運びとして出てしまった。
 
 鬼木達監督体制下の直近2シーズンとは違い、今季は序盤から筋肉系を含む怪我人が続出したのは想定外の出来事だったが、若手の急成長がチームを助けたこともまた想定外だった。選手を固定することで実現できる戦術面の成熟は遅れたが、分厚い選手層が現出し、さらに戦術的柔軟性を手にできたという点で功罪両面が出た。
 
 怪我人については、序盤に低迷した昨季の轍を踏まぬよう、チームの仕上げを急いだことが裏目に出た可能性は指摘しておきたい。ゼロックス杯に照準を合わせた身体作りをしており、それが選手たちの疲労を早めた可能性はある。肉体の限界に近づかなければ勝ち抜けない厳しい戦いだからこその難しさだと言えそう。
 
 結果は昨季に引き続いてのグループステージ敗退ではあるのだが、前述の通り選手層と戦術的柔軟性を手に入れた今季は昨季とは違う。来季の再起を願いたい。
 
取材・文●江藤高志(フリーライター)
 
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