【元マドリー指揮官のコラム】ピケとファン・ダイク、極限の大一番で見せたふたりのマエストロの「威厳」

2019年05月10日 エル・パイス紙

味方には尊敬を、対戦相手には畏怖を

ともにチームのDFリーダーとして君臨するピケ(右)とファン・ダイク(左)。軍配は後者に上がった。(C)Getty Images

 先日行なわれたチャンピオンズ・リーグ(CL)準決勝のバルセロナ対リバプールで、見どころのひとつとなったのが、バルサのジェラール・ピケとリバプールのフィルジル・ファン・ダイクによるCB対決だった。

 ふたりは"守備のマエストロ"であり、そのプレーからはひとつの物事に一心不乱に取り組む子供に相通ずる真剣さが全身にみなぎっている。ともに体格に恵まれ、どんなに厳しい局面でも一流のプレーヤーに相応しい自信と風格を持って対応する。

 CBとしてタイプは異なるが、両者に共通するのがその圧倒的なカリスマ性だ。断っておくが、パーソナリティーではない。サッカーにおいてパーソナリティーの強さとは、重圧から逃げずに立ち向かうことを言う。
 
 一方、カリスマ性の強さとは、その選手の品格や風格がもたらす言動、影響力によって周囲から注目と視線を集め、味方には尊敬を、対戦相手には畏怖を与えることを言う。そう、まさにピケとファン・ダイクのことである。

 ふたりはそれだけ特別な選手であり、この極限の重圧がかかる大一番においてもチームが劣勢を強いられたり、対人戦で後手を踏んだりすることはあったが、クラック特有の「威厳」を失うことは一度たりともなかった。

 彼らを見ていると、爆撃の最中でも平然と葉巻を吸い続ける軍隊の大将を想起してしまうのだ。

文●ホルヘ・バルダーノ
翻訳:下村正幸

【著者プロフィール】
ホルヘ・バルダーノ/1955年10月4日、アルゼンチンのロス・パレハス生まれ。現役時代はストライカーとして活躍し、73年にニューウェルズでプロデビューを飾ると、75年にアラベスへ移籍。79~84年までプレーしたサラゴサでの活躍が認められ、84年にはレアル・マドリーへ入団。87年に現役を引退するまでプレーし、ラ・リーガ制覇とUEFAカップ優勝を2度ずつ成し遂げた。75年にデビューを飾ったアルゼンチン代表では、2度のW杯(82年と86年)に出場し、86年のメキシコ大会では優勝に貢献。現役引退後は、テネリフェ、マドリー、バレンシアの監督を歴任。その後はマドリーのSDや副会長を務めた。現在は、『エル・パイス』紙でコラムを執筆しているほか、解説者としても人気を博している。

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙に掲載されたバルダーノ氏のコラムを翻訳配信しています。
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