前田遼一がついに岐阜初ゴール!逆転勝利の琉球戦で見せた元日本代表の凄み

2019年05月09日 小崎仁久

「嬉しいし、やっと勝利に貢献できてホッとした気持ちもある」

前田(写真)が12節の琉球戦で移籍後初ゴール! さらに永島のゴールをアシストし、逆転劇の立役者になった。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 その望みは62分に湧きはじめ、ひたひたと次第に長良川競技場に溜まっていった。J1得点王、日本代表という肩書きを持つストライカーが、明らかにゲームチェンジャーとして躍動する姿に、会場のボルテージは高まっていく。0-1のビハインドから9戦ぶりの勝点3へ、これまでの鬱憤も含み膨らんだ期待は76分、ついに成就した。
 
 左サイドで得たCKをFW粟飯原尚平が蹴った。クリアされたボールは再び左に転がり、FW山岸祐也がタッチして時間を作る。そのパスを受けた粟飯原がもう一度ゴール前へと放り込んだ。ファーサイドにいたFW前田遼一は、CKではボールに触れられなかったが、すぐにポジションを取り直すと、細かな動きでDFと駆け引きをした。そして粟飯原の左足からボールが離れた瞬間、唐突に中央へ走り出すとマークを置き去りにし、DFふたりの外から頭でゴールを決めた。「自分が先に動き出したので、勝てる自信はあった」と前田は振り返る。
 
 スタジアムの歓喜はまだ続く。85分、敵陣右サイドで相手のパスをインターセプトしたMF三島頌平が、ゴール前中央の前田の足もとへボールを送った。それを前田はDFを背負い倒れ込みながら、寄ってきたMF永島悠史に渡す。受け取った永島はすかさずシュート。チームとして今季始めての逆転ゴールを決めた。「半分以上は(前田)遼一さんのゴール」と永島は言った。
 
 5試合ぶりに出場した前田は1ゴール・1アシスト。移籍後初ゴールで期待に応えた形になった。「嬉しいし、やっと勝利に貢献できてホッとした気持ちもある。シーズンが始まってから、まったくチームに貢献できていなかった。怪我で休んでもいたので取り返したいと思っていた」。

 ただ前田の働きはゴール、アシストだけではなかった。中央でのポストプレーで全体を押し上げ、最後尾にボールがあっても、すぐにボールをもらう動きに入った。ボールがもらえなくとも何度も動き直し、相手DFを疲弊させた。「ポストプレーはゴールを取るまでは良かったが、逆転してからはうまくいかなかったので反省点」と語るものの、プレスバックを常に行ない、倒されてもすぐに立ち上がりボールを受けようとする姿勢は、チームに活力を与えていた。
 
 国を代表するオールラウンドなストライカーにとっては、これらは当たり前のプレーなのだろうが、明らかに格を違いの見せつけ、試合の流れを一変させた。加えてピッチ上だけでなく、スタジアム全体の雰囲気さえも変えてしまった。
 
 チームとしては2か月ぶりの勝点3。4試合ぶりに降格圏内から脱することができた。「今日は良かったが、次の試合、その次の試合、これからが大事だと思っている」と話す前田。ただ、動き出しの早さ、オフ・ザ・ボールの駆け引き、ポスト、周囲を生かすプレーと、前田の真骨頂がようやくJ2のピッチで示された。前田の「これから」にスタジアムの期待はさらに高まるだろう。
 
取材・文●小崎仁久(フリーライター)
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