【ナビスコカップ】G大阪・阿部浩之|急速に存在感を強めるファイナル進出の立役者

2014年10月12日

チーム関係者からは日本代表に推す声も。

決勝進出を引き寄せる2ゴールを奪った阿部。チーム内でも急速に存在感を強めている。(C) SOCCER DIGEST

 ホームでの第1戦に3-1で勝利したG大阪は、1点差以内の敗戦でも決勝進出が決まる有利な状況で第2戦を迎えた。一方の川崎は少なくとも2点が必要で、第2戦では序盤からトップギアで一気呵成に攻め立てた。そうした立場の違いもあり、9分には大久保のヘディングシュートで川崎が幸先良く先制。その後も主導権は明らかに川崎が握っていたが、この日の主役はG大阪の阿部だった。
 
 42分にパトリックとのワンツーで抜け出した阿部は、狙い澄ましてゴール右隅に流し込み同点弾を奪うと、直後の45分には宇佐美の横パスをダイレクトで合わせて、鮮やかに逆転ゴールを奪って見せた。
 
 試合は前半の終了間際と後半に追加点を奪った川崎が3-2で勝利したものの、結局、2戦合計5-4で上回ったG大阪が決勝に進出。長谷川監督は「先制されましたが、よく2点を決めてくれた」と阿部の活躍を称賛し、さらにこう続けた。
 
「(評価しているのは)切り替えと決定力の部分。最近は慣れてきて、ゲームを落ち着かせるのも上手くこなしてくれていると思います。まあやっぱり、一番の魅力は決めるところで決め切れる力。今日もその力を出してくれた」
 
 殊勲の2ゴールを奪った当の本人は、「今日はホンマ、攻撃陣は全然良くなかった。距離が遠かったし、一つひとつのパスの質も次につなげにくかった。連係面は全然」と反省しつつも、「チームとして押し込まれる時間が長くて、シュートも全然打てていなかった。盛り返す意味で、いいシュートを打てたらと思っていたなかで決められたのは良かった」と振り返る。
 
 今季はリーグ戦で23試合に出場し、7ゴール(チーム3位)、ナビスコカップ決勝トーナメントでは4試合3ゴール(宇佐美と並びチームトップタイ)と大きく貢献しており、シュートのミート精度はチームでも指折りだ。強みは両足を遜色なく扱える点で、この日の2点目も利き足ではない左で巧みに合わせたものだった。
 
「右も左も全然関係ないです。打った後に、『あ、左か』という感じ」
 
 攻守両面でハードワークも惜しまず、高い技術も兼備するだけに、チーム関係者からは日本代表に推す声も強まっている。それも当然と頷けるほどのパフォーマンスを今季は見せているが、本人はいたって冷静だ。
 
「シュートは結構外しています。(チームとして)チャンスの場面が増えたから、自分のゴール数も増えているのかなと思いますけどね」
 
宇佐美とパトリックの強力2トップ、安定した守備陣の陰に隠れがちだが、阿部の奮闘ぶりは特筆に値するもので、より注目されてしかるべき選手のひとりだ。G大阪はリーグ戦、ナビスコカップ、天皇杯と唯一3冠の可能性を残しているなか、「自分の力を出せれば(出場の)チャンスはもらえる。点を取ることはもちろんですが、アシストや守備でも頑張りたい」と、タイトル獲得に向けて活躍を誓う。
 
取材・文:大木 勇(週刊サッカーダイジェスト)
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