8戦未勝利で21位に沈む岐阜…先発に抜擢された期待の新人・粟飯原尚平は救世主になれるか

2019年04月29日 小崎仁久

得点力不足にあえぐチームに、変化やきっかけを与えられる存在だ

6節の京都戦で初ゴールを決めた粟飯原(中央)は、10節・水戸戦からスタメンに抜擢されている。写真:徳原隆元

 大木武監督は、勢いがあり伸びしろが感じられるルーキーを重用することに躊躇がない。かつては古橋享吾(現・ヴィッセル神戸)や大本祐槻(現・V・ファーレン長崎)などを開幕戦から先発起用し、短期間で彼らの能力を引き出した。今シーズンも柳澤亘、長倉颯、会津雄生と3人のルーキーを開幕戦のピッチに立たせている。
 
 その意味では出遅れたものの、6節・京都戦でJデビューをするや否や、度肝を抜くショットを放ったのがもうひとりのルーキー、FW粟飯原尚平だ。
 
 京都戦の62分、0−0で初めてJのピッチに入ったが、相手に先に点を取られ状況は悪くなった。それでも前線で同点のチャンスをうかがう。83分、敵陣右サイドでボールを持った宮本航汰から、グラウンダーのパスがペナルティアークへと供給された。ニアサイドにいた山岸祐也がスルーし相手を引きつけると、中央で受けた粟飯原がDFに付かれながらも、ボールを左に持ち出した。もうひとつ外へ持ち出すかと思われた瞬間に、鋭くコンパクトに左足を振り、DFの股の間からゴール右隅に決めた。予想外のタイミング、予想外の強さで打たれた京都守備陣は、思わず天を仰いだ。
 
「試合に出る前から必ず打とうと決めていたので、いいシュートだったと自分でも思うし、自信になった。ディフェンダーが股を開くことは想定していた。あのシュートのタイミングは自分のタイミング」と粟飯原は振り返る。

 178センチ・75キロ。圧倒的なサイズがあるわけではないが、「ゴリゴリと強引に持って行くのが持ち味」と言うように、体幹の強さを感じさせるプレーぶり。レフティのストライカーというのも特異ではあるが、一番の魅力はやはりシュートのパンチ力。冬のキャンプ時からゴールを量産し、その左足に注目が集まるようになった。日々のトレーニングでも常に強烈なショットを放っている。J初ゴールをお膳立てした山岸も「良いものを持っており、見習うべきところがある」とべた褒めした。
 
 10節・水戸戦では初めてスターティングメンバーに名を連ねた。得点こそなかったものの、DFライン裏への飛び出しや、マークのふたりを強引に突破してゴールに迫るなど、次第に他の特色も出しつつある。
 
 テクニカルにパスでゴールネットを揺らそうとするチームスタイルの中、フィジカルとパンチ力でシュートを打っていく粟飯原はアクセントになる。それは自身も感じている。「自分はそれほど上手い選手ではないので、強引で貪欲にゴールを目指すことが大事だと考えている」
 
 大木監督も「ゴールはひとりで取れたものではなく、まだまだの部分が多いが、重要な選手のひとり」と話す。それは本人も自覚している。「攻撃ではもっと持ち味を出して、守備ではもっとプレッシャーをかけていかないといけない。結果を残してアピールしたい」。
 
 怪我人が増え、得点力不足にあえぐチームにとって、何かの変化、きっかけが欲しいところ。チームスタイルにないパンチ力、強引さ。粟飯原の左足にかかるところが大きくなってきた。
 
取材・文●小崎仁久(フリーライター)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事