「怪我の功名ではないですが…」と長谷川監督も証言。久保不在だからこそ見えたFC東京の底力

2019年04月20日 後藤勝

サイドの勝負で優っていたことが、クリーンシートの要因だった

攻撃の迫力不足は否めなかったが、一方で守備面は隙がなかった。写真:徳原隆元

 首位攻防戦を翌日に控えた小平で、遠征出発前の室屋成は「彼らはサイドの攻撃が強い。そのサイドを1対1のところで抑えれば楽になる」と話していた。サンフレッチェ広島のストロングはサイド攻撃。特に左ウイングバックの柏好文がキーパーソンだが、この18番を右サイドバックの室屋と右サイドハーフの大森晃太郎は協同して抑えきった。
 
 両チームともに90分間を通してのシュート数は3本。広島には終盤、渡大生が左ポストを叩いたペナルティエリアの外からのシュートがあったが、それを除いてはFC東京が危険を感じる場面はほとんどなかった。そうなりかけても森重真人とチャン・ヒョンスが跳ね返すか、あるいは守備陣が寄ってたかってバイタルエリアで潰していた。だがそこに行く前に、サイドの勝負で優っていたことが、クリーンシートの要因だった。
 
 長谷川健太監督も「(久保建英が遠征に不参加で)怪我の功名ではないですが、大森晃太郎が先発で出たので、晃太郎と室屋のところで彼(柏)を自由にさせなかったことが大きなポイントではなかったかと思います」と証言した。
 
 ガンバ大阪時代から長谷川監督のなんたるかを知る大森が、攻守両面で貢献した。攻撃面ではディエゴ・オリヴェイラが「大森が優しいパスを出してくれて考える間もなく決められた。(久保も)チームにとってプラスの存在だが、大森も同じくらいいい準備をしてきた」と称賛するラストパス。そして守備では柏が中へと入ろうとする動きを読み切って対応した。
 
「柏にはカットインからのクロスやシュートがある。僕と室屋がふたりでそれを出させなかった」(大森)
 
 室屋の言葉には充実感が漂っていた。
「前半は難しい試合。ゼロで抑えられたことがよかった。(柏は)試合の前から(長谷川)健太さんに言われていましたし、そこが今日の鍵になるポイントだった」

 得点する直前の1点を獲りに行く時間帯を除けば攻撃に出ず守備に傾注していた。個人的には0-0の引き分けを覚悟したという。万が一の可能性であっても強力なフォワード陣の一発があることを信じて、守りに徹した。
 
 苦手にしていた3-4-2-1を抑えきってもなお「広島はポジショニングがよかった」と、室屋はその攻撃の質に舌を巻いていた。それでも「最後はヘディングで跳ね返してくれる。頼りになるふたりです」と、自身の活躍はさておき、チームメイトを褒めた。
 
 攻撃にアクセントをつけられる久保が不在であったとしても、このチームワークとディフェンスがあるかぎりFC東京は沈まない。底力を証明する一戦だった。
 
取材・文●後藤勝(フリーライター)
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