「あれは、ただの1点じゃない」新潟を救った渡邊凌磨の初ゴールに込められた想い

2019年04月11日 大中祐二

値千金のゴールシーン。本人は一連のプレーの途中で記憶が途切れている

町田戦での新潟初ゴールは、「切り返したところまでしか覚えていない」という無心の一撃だった。(C)J.LEAGUE PHOTOS

「あれは、ただの1点じゃない」
 昨年の夏、ドイツのインゴルシュタットからアルビレックス新潟に加入したMF渡邊凌磨は、J2リーグ7節・FC町田ゼルビア戦の新潟初ゴールを振り返った。
 
 そう。自身にとって、チームにとって、単なる1点ではなかった。
 その一撃は、チームを救った。7節を迎える時点でチームは13位。5節・アビスパ福岡戦、6節・徳島ヴォルティス戦と自分たちより下位のチームに敗れ、今季初の連敗中と、悪い流れにあった。
 
 片渕浩一郎監督は大幅なメンバーの入れ替えに踏み切り、渡邊凌を初めて先発に抜てきした。右サイドハーフに入った渡邊凌は0-0で迎えた59分、MF高木善朗からのサイドチェンジを鮮やかなトラップでコントロール。勢いを落とすことなくペナルティエリア右に侵入し、深い切り返しからふたりを交わすと、左足を振り抜いてゴールのファーサイドに突き刺した。これが決勝ゴールとなり、チームは連敗を止め、悪い流れを絶ち切った。
 

 値千金のゴールシーン。本人は、一連のプレーの途中で記憶が途切れている。
 
「切り返したところまでしか覚えていないんです。目の前の相手をかわして、そこからは完全に感覚でシュートを打った。あとで映像を見直して、自分の得意なシュートではあったけれど、覚えていないんですよ。自分でも、よく2タッチ目を持ち出したと思う。右足でタッチした後、左のアウトサイドで」
 
 キャンプから、ずっと好パフォーマンスを維持していた。だが、チャンスはなかなか訪れなかった。初めてのメンバー入りが6節の徳島戦で、MF戸嶋祥郎と交代し、後半45分間プレーした。
 
 実感したのが、「いつ出番が来てもいいように」という意識で続けてきた準備の正しさだ。これまでであれば、初先発の町田戦は重圧もあり、余計に疲労感を覚えていたところ。だが、トレーニングゲームと同じ強度、感覚で、伸び伸びとプレーすることができた。
 
「自分の意識、メンタルの部分が変わってきたのかな、と思います。メンバー外の居残り練習を見てくれる能仲さん(能仲太司コーチ)も親身になって、いつも『今、ゲームに絡めていなくても大丈夫。スタッフはみんな見ているから、続けろ』と話してくれて。自分でメンタルのコントロールをできないといけないけれど、本当に助けられました」
 

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