「僕の宝物だ。でも…」母国救済のため、イラン代表GKがC・ロナウドとの“思い出の品”を競売へ

2019年04月11日 サッカーダイジェストWeb編集部

イラン全土に広がる、甚大な洪水被害

ロシアW杯におけるハイライトのひとつとなった、C・ロナウドのPK失敗。ベイランバンド(写真)はその試合で着用したグローブとスパイクを競売にかけると発表した。(C)REUTERS/AFLO

 降り続いた記録的な長雨の影響で、大きな洪水被害に見舞われているのがイランだ。

 3月中旬からのおよそ1か月の間で、1900を超える市町村で河川の決壊などによる洪水被害が確認されており、犠牲者は70名に及んでいる。被災地と被災者への支援が遅々として進まないなか、イラン政府は声明を発表。国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)の支援物資を受領できていないのは、アメリカの経済制裁のせいだと強調し、国会議長も「アメリカの制裁が妨げになっている。我々は赤十字から1ドルも受け取っていない」と怒りを露にしている。

 この窮状に立ち上がったのが、イラン代表の正守護神であるアリレザ・ベイランバンドだ。みずから思い出の私物をオークションにかけ、その落札額を義援金として寄付すると公表。地元紙『Persia Digest』を通して、以下のように想いを明かしている。

「僕の母国と同胞にとっては、酷い1年の始まりとなってしまった。多くの尊い命が失われ、数え切れないほどの家屋が浸水して、いまだ住む場所に困る国民がたくさんいる。本当に悲しい。僕は、2018年のロシア・ワールドカップで使ったグローブとスパイクをオークションにかけようと思う。ポルトガル戦で着用した、僕にとっての宝物だけど、だからこそ支援に活用したいんだ」

 
 ロシア・ワールドカップのグループリーグ、イラン代表対ポルトガル代表戦。0-1のビハインドを負って迎えた52分、イランは痛恨のPKを献上してしまう。ポルトガルのキッカーはもちろん、英雄クリスチアーノ・ロナウド。この名手の渾身ショットをものの見事に阻止してみせたのが、ベイランバンドだった。イランは終了間際に劇的弾を挙げて1-1のドローに持ち込んだ。結果的に決勝トーナメント進出は果たせなかったが、ポルトガル相手の死闘とベイランバンドのスーパーセーブは伝説として語り継がれている。

 ペルセポリス所属の26歳GKは、その忘れじの逸品を競売にかける決断を下したのだ。

 ベイランバンドの公式SNSには賛辞の声が続々と寄せられており、地元紙『Persia Digest』は「彼の行動によってイランの惨状がより広く認知され、世界的な支援の輪が広がることを願う」と綴っている。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部
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