本田圭佑 ユベントス戦は改めて真価が問われる「試金石」

2014年09月19日 神尾光臣

際立っているのはオフ・ザ・ボールの動き。

開幕から2試合連続ゴールと好スタートを切った本田。ユベントスとの大一番は、改めて真価が問われる試金石だ。 (C) Getty Images

 セリエA2節のパルマ戦で、本田圭佑は1ゴール・1アシストの活躍を見せた。ゴールはラツィオとの開幕戦に続く2戦連発で、DFダニエレ・ボネーラが退場となり、CBの投入にともなって本田がベンチに下がると、敵地エンニオ・タルディーニのスタンドからは拍手が起こった。ミラノから遠くないこともあり、かなりの数のミラニスタがメインスタンドを「占拠」していたが、彼らは本田を見直したということだ。
 
 ネットのファンフォーラムでは、こんなやり取りがあった。
「オレは前から本田を信じていたぜ」
「手のひら返してんじゃないよ」
 手のひらを返しているのは、ファンだけではない。
『日本に送り返せ』『ただのマーケティング要員』などと、つい最近まで辛辣だったメディアもそうだ。ラツィオ戦も、パルマ戦も軒並み採点7と高評価し、「2015年1月、本田がアジアカップに出場した場合、この試合とこの試合とこの試合が不在になる」と、早くも離脱を懸念する記事もあった。
 
「何度も言うが、本田は過小評価されている。いい選手で、かつ意識も高い。これまでの監督がなぜ彼を外せなかったのか、よく分かったよ」
 開幕直前、メディアに対して堂々と語ったフィリッポ・インザーギ監督の面目躍如である。かつて黄金時代を築いたクラブOBとして、チームを立て直すにあたって、「選手はみな横一線。闘わない者はプレーさせない」と練習からハードワークを強調。そのなかで、覚悟を決めて精力的なトレーニングに臨んだ本田を「選手たちの模範」と絶賛し、信頼を寄せる。
 
 実際、本田の好調の理由はハードワークにある。ここまで際立っているのは、精力的なオフ・ザ・ボールの動きだ。インザーギ監督が戦術上のキーとするオフ・ザ・ボールの動きを本田は実践し、それがゴールという結果につながっている。
 
 いわゆる「偽9番」としてプレーするジェレミー・メネーズが空けた中央のスペースへ走り込み、あるいは自らも対面のサイドバックを引き寄せてスペースを作る。本田の後方でサイドバックを務めるイグナツィオ・アバーテも、
「本田は右FWのポジションをすごくよく解釈している。いつも良いランニングでスペースを作ってくれるんだ。僕がオーバーラップできるスペースをね」
 と賛辞を惜しまない。
 
 9月20日、ミランは本拠地サン・シーロで王者ユベントスを迎え撃つ。今シーズン最初の大一番だ。怪我でパルマ戦を欠場したステファン・エル・シャーラウィと、開幕から出遅れていたフェルナンド・トーレスは全体練習に復帰しているが、衛星TV局『スカイ・スポーツ』は「本田とメネーズはもはや動かせない」とスタメンを予想する。
 
「トーレスが復帰すればメネーズがサイドに回り、さすがに本田が外されることになるだろう」と言った声もまだ聞こえるが、ユーベを相手に結果を残せば本田の立場は確固たるものとなるだろう。改めて真価が試される重要な試金石――。それが本田にとってのユーベ戦だ。
 
取材・文:神尾光臣
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