【アジア杯検証】想定外の試練に致命的ハンデも… 森保Jはいかなる状況下で7試合を戦ったのか?

2019年02月03日 加部 究

大会が近づき、開幕してからもチームには試練ばかりが押し寄せた

多くの試練に見舞われたながら7試合を戦い抜いた森保ジャパン。準備不足の面もあったが、大会を通じポジティブな側面も少なくなかった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 終幕に警鐘が鳴り、日本サッカーの将来を思えばハッピーエンドだったのかもしれない。

 今回のアジアカップは、中東勢の絶対有利が動かない大会だった。地理的な条件以上に、ほぼ全員を国内組で固め、決勝のスタメン全員が海外のクラブに所属する日本と比べれば、代表強化の方法に大きな乖離があった。特にカタールは、アフリカ出身の身体能力に優れた素材を、スペインの指導者が若年代から徹底指導する新しいトレンドを確立した。AFC(アジア・サッカー連盟)は、代表選手の有効性を問うUAEからの抗議を棄却したが、今後もし同じ方式で中東諸国の躍進が顕著になれば、国際的見地で再燃する時が来る可能性もあるだろう。

 結局大会を俯瞰すれば、中東勢のチーム力と、日韓に象徴されるような個の総合力の競い合いとなり、新チームが結成されて最も準備期間が短かった日本が最多の7試合を経験出来たのは大きな収穫だった。このタイミングで大陸選手権が開催されることは予め分かっていたことなので、十分な準備が出来なかった経緯に反省の余地があるが、逆にそういう状況でバトンを受けても大胆な世代交代を進めた森保一監督の英断は見事だった。改めて冨安健洋、堂安律、南野拓実、さらには今回故障離脱した中島翔哉らワールドカップに肉薄したタレントの勢いと反骨を迅速に活用し、遠藤航にも適性の新境地としてボランチのポジションを提供した手腕は、新チームに弾みをつけた。
 
 しかも大会が近づき、開幕してからもチームには試練ばかりが押し寄せた。とりわけボランチの故障者続出は想定を超えたはずで、三竿健斗、守田英正と続き、大会に入ってからも青山敏弘、そして準決勝途中では遠藤が離脱。追加招集された本職ではない塩谷司が決勝戦のピッチに立つことになった。また攻撃面でも、最前線で起点となる大迫勇也がフル稼働出来ず、おそらく代役の最適任者と目される鈴木優麿もACLで故障。武藤嘉紀や北川航也はタイプが異なり、彼らの活用方法は本番で模索している状況だった。

 日本は過去4度優勝を飾っているが、特に代表チームで合宿遠征を繰り返すことができたハンス・オフトやフィリップ・トルシエの時代とは完全に一線を画し、今回は素の力、言わば即興の連鎖で決勝まで上り詰めた。また悪条件下での接戦をものにして来た過程では、闘いの本質を捉え冷静に集中を持続するメンタリティが継承されていることも見て取れた。

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