「君にこの金メダルを捧げたい」新王者カタールの“10アシストMF”を支えた、いまは亡き親友への想い|アジア杯

2019年02月03日 サッカーダイジェストWeb編集部

「僕たちの夢は、いつかアジア王者になることだったね」

神出鬼没な動きで日本守備陣を混乱に陥れたアフィフ(右)。アジアカップ決勝における“陰のMVP”だ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 アジアカップ決勝で、日本代表ディフェンスがもっとも手を焼いた男だ。大会を通して10アシストを記録し、ファイナルでも決定的なPKを決めてカタール代表を勝利に導いたアタッカー、アクラム・アフィフである。

 現在22歳のアフィフは、十代から将来を嘱望されてきたエリート中のエリートだ。カタール代表の主軸は帰化選手が大半を占めるが、両親がイエメンにルーツを持つものの、アフィフは生まれも育ちも首都ドーハのカタール人。セビージャとビジャレアルの下部組織で研鑽を積み、ベルギー・リーグでもプレーしたのち、古巣のアル・サッドにレンタルで舞い戻った。所属元はいまもビジャレアルである。

 そんなアフィフが、優勝を決めた直後に自身のSNSを更新。いまは亡き親友への想いを綴って、感動を呼んでいる。

「セリン・アブドゥ。僕たちの夢は、いつの日かアジアでチャンピオンになることだったね。今日、僕は報告するよ、ブラザー。アジアが僕たちのものになったということをね。君にトロフィーとこの金メダルを捧げたい。君がいまそばにいなくて、本当に寂しいんだ(神のお慈悲を賜りますことを)」

 
 アブドゥはアフィフよりもひとつ年上のDFで、国内クラブのアル・ホールでプレーしていた。アフィフとは年代別の代表で常に苦楽を共にした仲で、大親友だったという。彼もまた国を挙げて代表チーム強化を推進してきたカタールにあって、近未来を背負って立つと期待された逸材だった。本来ならアジアカップを戦う登録メンバーにも選ばれていただろう。

 しかし2016年9月27日、無念にも彼はガンでこの世を去った。21歳という若さでだ。

 親友への想いを胸に秘め、アジアの列強を相手に圧倒的な技巧を見せつけながら、頂点へとたどり着いたアフィフ。日本戦でPKによる大会初ゴールを決めたあと、シャツを脱いで喜びを爆発させ、イエローカードを頂戴した。心中期するところがあったのかもしれない。

 もはやアルモエズ・アリとの変則2トップは、カタールのみならずアジアが誇るホットセットだ。カタール代表の11番、アクラム・アフィフもまた、忘れられない名前となった。
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