開幕3試合で何が見えた? 【マンチェスター・ユナイテッド】のスタートを番記者が診断

2014年09月04日 マーク・オグデン

3バックの混乱ぶりがチーム全体を浮足立たせる。

101億円の価値を証明し、ディ・マリアは救世主となれるのか――。 (C) Getty Images

 8月16日に開幕したプレミアリーグは、9月頭の代表ウィークまでに3節を消化した。
 
 スタートから3試合で、何が見えたのか? プレミアのメガ5クラブに密着する各番記者が、それぞれのチームの滑り出しを考察した。
 
 知将ルイス・ファン・ハールを迎えて再スタートを切りながら、3-4-1-2の新システムが思うように機能せず、3試合でいまだ勝ち星のないマンチェスター・ユナイテッドを、マーク・オグデン記者が斬る。
 
[考察1]
【ファン・ハール改革は茨の道】
 
 ルイス・ファン・ハールの改革は、思った以上に時間がかかりそうだ。オランダ人指揮官が持ち込んだ3-4-1-2の新システムは、開幕3戦を未勝利で終えた元凶と言える。ロビン・ファン・ペルシとウェイン・ルーニーの2トップが孤立し、中盤が創造性と無縁のプレーを続けているのは、このシステムが監督の思惑通りに機能していないからだ。
 
 もっとも、責任を負うべきファン・ハールにも情状酌量の余地はある。アンデル・エレーラ、ルーク・ショーなど怪我人が続出し、その数は二桁にも達する。故障者が戦列に戻り、ラダメル・ファルカオ、ダレイ・ブリントという駆け込みで獲得した新戦力が出揃えば、内容も良い方向に変化するだろう。
 
 いずれにしても、これからが勝負だが、開幕3試合を見る限り、新しい戦術が浸透するまでには時間がかかるだろう。
 
[考察2]
【3バックがとりわけ不安定】
 
 3バックの最終ラインは、まさしく目も当てられない有り様だ。3人のCBはどう動けばいいのか分からず、その混乱ぶりがチーム全体を浮足立たせた。
 
 プレシーズンマッチでうまく機能しているように見えたのは、開幕が遅い国外の対戦相手がいずれも調整の初期段階で、フィジカルコンディションが整っていなかったからだ。相手のインテンシティーが高まったプレミアの本番で、馬脚があらわれたというわけだ。敵のアタッカーを捕まえきれず、安易に失点を重ねた。
 
 ショーとラファエウ・ダ・シウバというウイングバックのレギュラー候補が揃って故障離脱している誤算も、不安定な守備の一因だ。本来ウイングのアシュリー・ヤングとアントニオ・バレンシアがウイングバックでは、3バックの助けにはならない。
 
[考察3]
【ディ・マリアには大きな可能性】
 
 英国史上最高額の5970万ポンド(約101億円)で獲得したアンヘル・ディ・マリアが、3節のバーンリー戦でデビューした。本領を発揮したとはとても言えないが、ポジティブなファーストインプレッションを残したのは確かだ。
 
 とくに評価したいのがスピード。クリスチアーノ・ロナウドの退団以降、失われていたプレースピードを、アルゼンチン代表MFはもたらしてくれそうだ。加えて、パスの精度(とりわけロングパス)も特筆に値する。バーンリー戦では、およそ35メートルのラストパスをピンポイントでファン・ペルシに通していた。トップレベルのスピードと質の高いパスによって、攻撃に奥行きが生まれるはずだ。
 
【記者】
Marc OGDEN|Daily Telegraph
マーク・オグデン/デイリー・テレグラフ
英高級紙で最大の発行部数を誇る『デイリー・テレグラフ』のユナイテッド番を務める花形で、アレックス・ファーガソン前監督の勇退をスクープした敏腕だ。他国のサッカー事情に通暁し、緻密かつ冷静な分析に基づいた記事で抜群の信頼を得ている。
【翻訳】
田嶋康輔
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