「今日、スポーツは敗北した…」 人種差別被害のクリバリ、出場停止処分の軽減は認められず

2019年01月19日 サッカーダイジェストWeb編集部

インテルは反差別キャンペーンを開始。

裁定はクリバリにとって悔しい結果に。出場停止が2試合から1試合に軽減されることはなかった。(C)Getty Images

 1月19日に行なわれるセリエA第19節、インテル対サッスオーロの一戦は、無観客試合として開催される。昨年末のナポリ戦で、一部のインテル・サポーターがカリドゥ・クリバリに人種差別行為(モンキーチャント)をしたため、処分が科されているからだ。

 一方で、このモンキーチャントに苛立ったクリバリは、試合終盤に判定に抗議した際、主審に皮肉をまじえた拍手をして退場。2試合の出場停止処分を科された。クリバリとナポリは処分を不服として異議を申し立て、1試合の停止に軽減するよう求めていた。

 だが、18日の裁定で、クリバリとナポリの主張は認められなかった。これにより、クリバリは20日の次節ラツィオ戦にも出場できない。

 イタリア紙『Gazzetta dello Sport』によると、弁護を担当したマッティア・グラッサーニ弁護士は、結果を受けて「今日、スポーツは敗北した。肌の色で差別された者の名誉を回復させ、人種差別に対抗するための大きな機会を逃したのだ」と怒りを露にしている。

「この世界はまだまだ前進しなければいけない。クリバリが経験したことは、文化的な国にふさわしくないからだ。差別の犠牲者が、屈辱に続いて、出場停止という罰まで受けるなんて…。規則をつくっても、適用の仕方がこれでは役に立たない」
 
 一方、処分を受けたインテルは同日、人種差別に反対する「BUUキャンペーン」を始めた。

 インテルは、差別チャントを意味する「BUU」を、ポジティブな意味を持つ同音異語の頭字語「BUU」(Brothers Universally United/みな団結した同志)に変え、「BUUを二度と聞くことのないように、BUUと書こう。人種差別ではなく、団結のメッセージとするために」と呼び掛けている。

 動画では、スティーブン・チャン会長を筆頭に、ハビエル・サネッティ副会長、マウロ・イカルディ主将、レジェンドのルイス・フィーゴやサミュエル・エトーが、それぞれ「BUU」と書かれた物を示して差別反対を訴えた。

 ルチアーノ・スパレッティ監督は同日の会見で、「人種差別のひどいエピソードを、スタジアムでそういう振る舞いをする者たちから完全に距離を置く機会に変えようと、クラブが決めたことだ。他のチームも、みんなこの動きに賛同してくれることを願っている」と述べている。

 インテルのキャンペーンには、すでにミランやフィオレンティーナといったクラブがSNSで連帯の意を表明している。度重なる人種差別問題でイメージダウンを繰り返してきたイタリア・サッカー界だが、これを機に差別撲滅へと前進できるだろうか。
 
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