【アジア杯/コラム】“仕掛け人”南野の献身。決定力ゼロでも光った粘着質なドリブル

2019年01月16日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

終了間際のあの突破がなにより素晴らしかった

南野のドリブルはオマーンにしてみれば脅威だったはずだ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 ゴールを決めてこそFW。正しい見解である。ストライカーたるもの結果を出すべきという点に限れば、オマーン戦の南野拓実は失格だった。前半に複数の決定機を迎えながら、まさかのノーゴール。決定力ゼロでは、弁解の余地もないだろう。
 
 ただ、だからといってチームへの貢献度が低かったかと言えばそうではない。なにより光ったのは、取られそうで取られない、粘着質なドリブル。オマーンの選手にプレッシャーをかけられながらも、持ち前の推進力を生かしてグングンと前に突き進む。これでもかというスタンスで仕掛ける南野のアグレッシブさは、オマーンの守備陣にとって厄介だったはずだ。
 
 印象的だったのは、後半アディショナルタイム(90+2分)のドリブル突破だ。左サイドを複数の相手に囲まれながらも駆け上がり、エリア付近で倒されてファウルをもらう。疲労がピークに達し、集中を欠く時間帯にひとりで持ち上がれる馬力は称賛に値した。
 
 オマーンに流れが傾いた後半、日本は攻め込まれる時間帯が少なくなかった。1-0という緊迫した状況下では身体的にも精神的にも疲労が溜まる。そんななかで、南野のように独力で時間を稼いでくれる。しかも、普通なら足が止まってしまう後半のアディショナルタイムにである。チームメイトはかなり助かったはずだ。

 
 前半から何度もドリブルで仕掛けて体力をそれなりに消耗しているはずなのに、後半のアディショナルタイムにあれだけスピードに乗った、馬力のあるドリブルを繰り出せるなんて……。天晴れというしかない。
 
 もちろん、ボールを持ちすぎという見方もできる。ドリブルとパスを上手く使い分けて相手を揺さぶることができれば、追加点のチャンスを効率よく作れたかもしれない。それでも──。あれだけ決定機を外しながらも消極的にならず、仕掛けに仕掛けたタフさはやはり素晴らしい。
 
 "仕掛け人"南野の献身。決定力ゼロでも、勝利への貢献度は間違いなく高かった。
 
文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)
 
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