【選手権秘話】「自分たちの力で勝ち上がった実感がある」1年越しで叶えた”尚志のサッカー”を支えた3年生

2019年01月16日 熊介子(サッカーダイジェストWeb編集部)

「“尚志のサッカー”で勝ち上がることができた実感がある」

青森山田を相手にハットトリックを達成した染野(9番)を祝福する仲間たち。セットプレーで1点、流れからの2点は見事だった。 写真:田中研治

 今大会の福島県代表・尚志は、快進撃という言葉がふさわしい活躍ぶりだった。

 1回戦で鹿児島の名門、神村学園をPK戦で制し、2回戦は東福岡との1年越しのリベンジマッチに2-0で勝利。3回戦では前大会王者・前橋育英との対戦に競り勝ち、準々決勝では帝京長岡との壮絶な攻守戦を制して、7年ぶりの準決勝進出を決めた。

 尚志は、1年前の同大会は1回戦で敗退している。九州屈指の強豪・東福岡を相手に、0-3という完敗だった。先発には、当時2年生だった二瓶由嵩、大川健、沼田皇海、途中出場で伊藤綾汰、加瀬直輝、坂下健将、黒澤誓哉ら、今大会の主力がピッチに足を踏み入れていた。サブには森本涼太、染野唯月もいた。

 仲村浩二監督は当時のことを、「相手をリスペクトしすぎていた」と振り返った。自らの長所よりも相手の長所を潰すことを選んだ結果の敗北に、悔やみきれないものがあった。

 尚志らしいサッカー。細かなパスワークでつないで、敵をかわす。高さのある相手には足技を駆使して立ち向かう。前線から最終ラインまでをコンパクトに保ち、前線から積極的にプレスをかけるスタイルは、GKを始めとした守備陣の積極性はもちろんのこと、全員にスタミナ、精神力、テクニックが求められる。

 彼らは1年越しで、選手権の舞台で尚志らしい攻撃的なサッカーを貫き、勝ち進んだ。流れるようなパスワークとダイレクトプレーで観客を魅了。仲村監督は2011年のベスト4進出と今大会のチームを比べ、「あの時は運も味方してくれたことも大きかった。今回は運よりも、自分たちの力、"尚志のサッカー"で勝ち上がることができた実感がある」と語った。

 だが、その快進撃は準決勝で終止符を打つ。準決勝の舞台は埼玉スタジアム2002。1月12日に行なわれた準決勝の第1試合で尚志は、青森県代表の強豪・青森山田と激突。FW染野唯月がハットトリックを達成して3点を奪うも、檀崎竜孔ら強力な攻撃陣を誇る青森山田に3点を奪われ、PK戦にもつれ込むという激戦だった。PK戦は5人中4人が決めた青森山田が勝利。尚志は快進撃を終えた。

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