東京V、ロティーナ体制の終焉――跳ね返されたJ1の壁と挑戦者の戦いぶり

2018年12月09日 海江田哲朗

「0-1のままなら、同点に追いつけば相手がナーバスになったはずだが…」

11年ぶりのJ1復帰は、決定戦での敗北で潰えた。選手たちからは実力差を痛感するコメントが聞かれた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

「自分たちに力がなかったということ。やりたい形にさせてもらえなかった部分もあり、攻撃面では向こうのアイデアの豊富さや個の打開力に差があった」
 
 キャプテンの井林章は、東京Vにとって今季最大の大一番をそう振り返る。
 
 8日、J1参入プレーオフ決定戦。ヤマハスタジアムに響き渡ったのは、磐田がJ1に踏みとどまる勝利の凱歌だった。
 
 前半、東京Vは磐田の激しいプレッシングに苦しみ、ボールがなかなか前に進まない。相手に前に立たれ、度々、後ろ向きにされては攻撃のリズムが出るはずもなかった。
 
「もっといいポジションを取ってボールを回せれば、相手の裏を取ってひっくり返すこともできた。その狙いを実行させてもらえなかったのが現実」(井上潮音)
 
 41分、磐田は鮮やかな連係で右サイドを崩すと、裏に抜け出した小川航基が上福元直人に倒され、PKを奪取。これを小川航が自ら決めて、磐田が先制する。一方の東京Vはシュートを1本も打つことなく前半を終えた。
 
 後半になって東京Vは渡辺皓太とレアンドロを投入し、戦局の転換を図る。レギュレーション上のアドバンテージを持つ磐田が全体のポジションを下げたせいもあり、ビルドアップへの圧力は軽減されたが、磐田の守備網に穴を開けるほどの攻撃の鋭さは出せない。
 
 65分、レアンドロのシュートは、カミンスキーがファインセーブ。これが東京Vにとって最初で最後の決定機となった。80分、田口泰士が直接フリーキックを決め、磐田がさらにリードは広げる。これで3点が必要になった東京Vに、反撃に打って出る力は残されていなかった。
 
「2点目を失ったのは非常に厳しかった。0‐1のままなら、こちらが同点に追いつけば相手はナーバスな状態になっていったはずだが」(ロティーナ監督)
 
 レギュラーシーズンの6位から、プレーオフで上位の大宮、横浜FCを破り、極めて困難なミッションを成し遂げるまであと1勝。いかに相手の力を封じ込め、自らのパフォーマンスを最大化させるか。そこが実力の差、地力の違いが顕著に表われる部分とはいえ、挑戦者として最後に力を出し切れなかったのは悔いが残ろう。
 
「昇格を逃してしまったのは残念ですが、選手たちの1年間の働き、仕事ぶりには満足しています。チームはすばらしいシーズンを過ごした」(ロティーナ監督)
 
 こうして、東京Vの11年ぶりのJ1復帰の望みは露と消えた。2年間に及ぶロティーナ体制の終焉だった。
 
取材・文●海江田哲朗(フリーライター)
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