横浜FCのJ1昇格は叶わず…それでも光った瀬沼優司の献身

2018年12月04日 高澤真輝

試合終盤に絶好のチャンスを迎えたが…

献身的に守備に貢献し、カウンターの尖兵にもなった瀬沼。試合を通して相手の脅威になり続けた。写真:徳原隆元

 リーグ3位でフィニッシュした横浜FCはJ1参入プレーオフ2回戦で姿を消した。終了間際の土壇場に失点を喫して敗退するという残酷な試合は、全体を見ればホームチームが主導権を握ってゲームを進める好内容だった。
 
 そのなかで光っていたのは瀬沼優司の運動量。今夏から横浜FCに加入して、キャリア初のインサイドハーフを任されたシーズンだったが、愚直なハードワークでチームを支え続けた。常々、瀬沼が口にしていたことがある。それは「特別なことをするのではなく凡事徹底。単純なことをとにかく一瞬でも気を抜かないでやる」こと。その言葉どおり東京V戦も自分のストロングポイントを前面に押し出していく。
 
 横浜FCは、トレーニングから準備していた相手のビルドアップに制限を掛けるプランを遂行。前線からプレスを掛けて、インサイドハーフが左右のセンターバックにアプローチし、横に揺さぶられた際は素早くスライドしてパスコースを遮断していく。加えて、瀬沼はセカンドボールを幾度となく拾い集め、カウンター時にも全力でスプリントを繰り返してゴールへと迫っていった。その落ちない馬力は最後まで相手の脅威となり、アディショナルタイムに最大の決定機が巡ってくる。しかし、GKとの1対1を制することができずシュートは枠を逸れて天を仰いだ。
 
「チームを勝利に導けなかった。決定的なチャンスもあった。決めていればチームも本当に楽にできた。決め切る力がなかったのは未熟さ。ああいうところで決め切ることで、今日も勝たせられたと思うので、自分の未熟さ、足りないところがまだまだあるから、この結果になってしまった」
 
 決めていれば勝てた試合。だが、瀬沼のハードワークが無ければ試合を優位に進めることも、リーグ終盤の連勝もなかった。「僕を必要としてくれた、このクラブに感謝の気持ちがある。チームを助けられる、チームに貢献できるゴールをたくさん取って、このチームに恩返しをしたい」と、足がもつれそうになりながらも横浜FCのために必死に走り続けてきた。目に見える部分だけをくり抜けば今季1得点と物足りない数字だが、目に見えない献身的なプレーはチームの原動力となり、ひとつの強みにもなっていった。それでも届かなかったJ1昇格。
 
「しっかり受け止めたい。今年はJ1に上がれないというのが現実なので、また来年に切り替えてやっていくしかない」
 
 あの時こうしていればと後悔もこみ上げてくるだろう。それでも、この日の悔しさを来季の糧にして、昇格へ導ける選手に成長したい。
 
取材・文●高澤真輝(フリーライター)
 
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