【現地発】泣くほどサッカーが嫌いだった乾貴士の同僚DF、バルサ戦のゴールで移籍市場の人気者に!

2018年11月19日 エル・パイス紙

ドミニカで生まれ、6歳のときにスペインに移住。

ベティスの左サイドで果敢にアップダウンを繰り返し、DFながらも公式戦で2得点・2アシストの成績を残すジュニオル。ビッグクラブへの移籍、スペイン代表デビューは時間の問題か。(C)Getty Images

「今後もより一層の努力を続ければ、サッカー界を代表する左サイドバックに成長できる可能性を秘めている」

 ベティスのレジェンドで、現在はクラブの外交部門のディレクターを務めるラファエル・ゴルディージョがこうエールを送るのが、ジュニオル・フィルポだ。先週のバルセロナ戦で先制ゴールを決めるなど、ベティスの勝利に貢献した現在売り出し中の左ウイングバックだ。

 つい1年前まで無名の若手だったジュニオルのキャリアの転機となったのが、今年2月のトップチームデビュー(デポルティボ戦)だ。3-5-2へのシステム変更に伴い、長い距離を駆動できるサイドバックを探し求めていたキケ・セティエン監督のニーズとも合致し、以降定位置を奪取。すでにプリメーラでの出場試合は25試合を数える。

 ジュニオルは1996年にドミニカ共和国のサント・ドミンゴで生まれ、6歳のときに両親とともにスペインのアンダルシア地方の町、コスタ・デル・ソルに移住した。当初はなかなかスペインの生活に馴染むことができず、両親はそのきっかけになればと地元のサッカークラブ、アトレティコ・ベナミエルに入団させた。
 
 しかし、ベースボールやバスケットボールが盛んなドミニカ出身のジュニオルにとって、サッカーは未知のスポーツ。当時はボールを蹴るのが嫌いで、練習中に泣き出すこともあったという。

 だがその最初の試練を乗り越えると、ジュニオルはめきめきと力を付け、2014年にグラナダ、マラガとの争奪戦を制したベティスへの移籍を果たした。

 入団当初はFWを務めていたジュニオルだが、静止した状態でのフェイントを苦手にしていた点に着目したベティスのテクニカルスタッフは、サイドバックへのコンバートを決断。すると、瞬く間に攻撃力が持ち味のサイドバックとして頭角を現わしはじめた。

 ジュニオルのプレーは、2017年5月にトップチームの監督に就任したセティエンの目にもすぐに留まり、その夏のシーズンキャンプにも帯同。それから翌年の2月までデビューが遅れたのは、ひとえにジュニオルが怪我をし、しかもその再発を繰り返したからだった。

 ジュニオルにとっては大きな試練だったが、家族やチームスタッフのサポートを得て怪我を克服。その後は、前述したようにすぐさま定位置を確保し、不動のレギュラーとして活躍している。

 そんなジュニオルには、1996年から2006年の長きに渡ってベティスの左サイドバックとして活躍したルイス・フェルナンデスも称賛を贈る。

「まずわたしが評価したいのは、恵まれた身体能力だ。彼はまだ伸びしろをたっぷり残している。将来性は無限だよ」

 さらにフェルナンデスは、近年の活躍の要因として、チーム戦術との相性の良さも挙げる。

「セティエンが採用する3バックシステムにおいて、サイドバックにはウイングのような振る舞いが求められる。その意味で、裏のスペースを駆け抜け、2列目からの飛び出しを得意とするジュニオルの特徴とマッチしている。彼には得点力もあるしね」

 フェルナンデスがこう語るように、ジュニオルはデビュー以来すでに4ゴールを挙げ、今シーズンだけでも2ゴールを決めている。偉大な先輩のお墨付きを得て天井知らずの成長を続けるジュニオルには、ジョゼップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティらが強い興味を示している。

文●ラファエル・ピネダ(エル・パイス紙/アンダルシア地方のクラブ担当)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。

次ページ【動画】ジュニオルが先制点! バルサ対ベティスのハイライトはこちら

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事