高まるジョーの存在感!爆発力は影を潜めるもフォア・ザ・チームで勝利に貢献

2018年11月08日 小田尚史

「何より大事なことはチームの勝利。一人だけでサッカーをしているわけではないからね」

夏場に見せた驚異的な得点力は影を潜めているが、ジョー(7番)は攻守に奮闘してチームを支えている。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 台風による延期分となったJ1リーグ28節のセレッソ大阪対名古屋グランパスが、6日、キンチョウスタジアムで行なわれ、1-0で名古屋が勝利した。名古屋は連敗をストップするとともに、J1残留圏内の15位に浮上。この価値ある勝利の立役者は、決勝点を決めた相馬勇紀だ。
 
 現在は早稲田大学に所属している大学4年生の相馬は、4日に関東大学リーグ19節・筑波大戦を戦い終えたばかりだが、「試合に使っていただく限りは、出来る限りのことはやってやろうと思っていました」と試合後に屈託ない表情で語るなど、中1日とは感じさせないハツラツとした動きでチームを活性化。風間八宏監督も、「言うことはない。今日、急に来て、こうやって同じように入れるのは能力の高さだと思います」と賛辞を贈った。
 
 また、この試合では、両チームのストライカー、名古屋のジョーとC大阪の杉本健勇の対決にも注目が集まった。結果的に、両者ともゴールを奪うことはできず、見せ場は作れなかったが、プレーの内容を比較すれば、チームにとって、より効果的なプレーを見せたのはジョー。先制点の場面では、ニアでDFを引き付けて貢献。試合後は、この瞬間の動きについて、「最近の試合では、相手の守備も堅い。そこで、自分の動きでDFを何人か引っ張ることができれば、他の選手にスペースを与えることができる」と話した。
 
 また、90分を通じて、対人の強いマテイ・ヨニッチの激しいマークを受けながらも懐の深いキープ力でボールを収めて起点になるなど、随所にチャンスを演出。「いろんな場面でチームを助けることが自分の役割。何より大事なことはチームの勝利。一人だけでサッカーをしているわけではないからね」とフォア・ザ・チームの精神を強調した。
 
 この日のジョーは、献身的な守備でもチームに貢献している。前線から身体を投げ出して相手にプレッシャーを与える場面も見られた。試合後は、「自分たちも頑張り切れば、走り切れば、勝点3を獲得することができる。今日はチーム全体が走り切ったと思う」と満足気な様子だったが、率先して表現していたのが彼でもあった。毎試合のように激しいマークに遭い、この試合を含めた直近の6試合で1得点と夏場に見せた爆発的な得点力は影を潜めているが、チームにとって欠かせない存在になっていることは、この試合からも容易に見て取れた。
 
 一方の杉本は、ジョーと同じくサイズと足下の技術を備えているが、攻撃時に味方と呼吸が合わない場面が散見。ジョーのように効果的に動いてチャンスを作ることはできなかった。個としても、35分に高い位置でボールを受けてドリブル、GKと1対1になりかけるチャンスを迎えたが、シュートはDFにブロックされるなど、どこかプレーに迷いも見られた。後半には、クロスに飛び込み、ランゲラックと交錯。右目の上を負傷しながらも最後まで戦い抜いたが、名古屋ゴールを脅かす場面は作れず試合を終えた。

 昨季は自身のキャリアハイとなる22得点を決めてチーム躍進の原動力となった杉本だが、今季はここまで4得点。チームが突き抜け切れない要因にもなっている。残り3試合。チームとして目標にしていたACL圏内である3位以内こそ絶望的となったが、今一度、動き方を整理し、得点の形をひとつでも多く作っていきたい。
 
取材・文●小田尚史(サッカーライター)
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